今年で製造から60年目を迎えた道民のソウルドリンク
地域に密着してきた老舗清涼飲料メーカー
北海道民に愛される炭酸飲料「コアップガラナ」を製造・卸売している「株式会社小原」は地元清涼飲料メーカーの老舗であり、ガラナ製造においては全国でもトップシェアを誇る。創業は1931年、初代の小原三次郎さんが果実酒の製造免許を取得し山ブドウを主原料とするブドウ酒・ブドウ液の製造を開始。同社の原点ともいえる炭酸飲料「銀星ラムネ」の製造がスタートしたのは1949年。以来、看板商品の「コアップガラナ」をはじめ、炭酸飲料「シャンメリー」、地元産の材料を使う清涼飲料など多数の自社商品や、コラボレーション商品「青の洞窟サイダー」などを製造。現在、陣頭に立つ6代目の小原光一社長と小原伸也専務は「健康や美容に効果があるとして、人気を集めている炭酸水の製造にも力を注ぎたい」と話し、2015年に炭酸水生産機械を新設し生産効率を向上させた。小ロットでの受注が可能な強みを生かし近年積極的にOEM(受託者ブランド名製造)も手掛けている。
手を尽くして販路拡大 工夫を凝らした商品展開も
日本のガラナ飲料は、輸入解禁が秒読みだった「コカ・コーラ」の対抗商品として開発されたもの。世界中で人気を博すコカ・コーラの勢いに脅威を感じた清涼飲料水を製造する全国の中小企業が手を結び「全国清涼飲料協同組合連合会」を組織。対策を講じているうちに、ブラジルにだけコカ・コーラの人気をしのぐガラナ飲料があることを知った。ブラジル大使館の協力を得てガラナの実を輸入し、各企業が独自に研究を重ね日本人の味覚に合うよう商品を開発。「コアップガラナ」と商標名を統一し、1960年、全国的に製造販売がスタート。その後、日本に上陸したコカ・コーラ人気は本州を席巻したが、小原社長は「津軽海峡のおかげで、コカ・コーラの北海道進出は本州から3年ほど遅れた」と言い、その間にあらゆる手を尽くした。問屋の力を借りて小売店へ流通させ、当時の国鉄の売店や車内販売と、販路拡大へのたゆまぬ尽力が実を結び、道民のソウルドリンクとしての地位を確立。近年ではガラナをビールで割った「ガラビー」、道の駅「なないろ・ななえ」での「ガラナソフト」など多角的な商品も人気を集め、消費者を飽きさせない工夫を凝らしている。
地元産の原材料を使用 ロングセラー商品
ガラナはブラジル・アマゾン川流域に自生するツル性植物。先住民が実を薬として活用、また煎じて茶として楽しんでいたもので、カフェインやポリフェノールが豊富に含まれており、嗜好品としてだけでなく疲労回復や滋養強壮に効果が期待されるエナジードリンクの先駆けとも考えられている。小原の「コアップガラナ」はガラナの実から抽出したエキスに、道産ジャガイモから作られた果糖ぶどう糖液糖、横津岳の伏流水などを加え、独特のピリッとした苦みと甘味とをバランス良く調えた。瓶にも描かれているリンゴの果汁を隠し味に使用して日本人好みのテイストに仕上げ、強めの炭酸ですっきりとした爽快感が味わえる。今も使われている瓶は、和をモチーフに京都・舞妓の立ち姿をイメージしたデザインだという。道内だけでなく、全国のアンテナショップ、オンラインショップ、北海道物産展などを通じて全国各地でも販売し、国内シェア率は6割を誇る。今年で製造から60年を迎えたコアップガラナ。受験生応援や高校生とのコラボなど地元との連携も深め、これからも長く愛される商品づくりに真摯に取り組んでいる。
株式会社 小原
七飯町中島29-2
☎0138‐65‐6545
ハコラク2020年6月号掲載