伝統的な珍味に付加価値を付け
新たな分野を開拓する商品に
物産展に販路を限定し独自性を打ち出して全国へ
「味の匠」は、百貨店の催事に特化して商品を製造販売する海産物生鮮珍味加工会社。大手海産物メーカーが数多く存在する函館で、より付加価値のある商品を発信するため、1987年に函館市日乃出町で設立された「橋本食品」などの生鮮珍味メーカー2社を前身に、2019年、催事事業を手掛けていた「味の匠」と合併し社名を統一。厳選した道産原料と手作り自社製造にこだわり、道内では工場直売、通信販売、函館市ふるさと納税品のみに販路を限定。21年には北斗市にあった本社工場を現在の函館市大森町に移転し、函館生まれの商品としてネームバリューに磨きをかけ、本州以南の有名百貨店の催事でしのぎを削ってきた。マイルドで食べやすい塩分5%の「匠のいか塩辛」やスルメイカと昆布のダシを利かせた甘口の「数の子松前漬」など、元来保存食として塩分が多かった定番の海産珍味を、時代に合わせ塩分と食品添加物を極力減らす体に優しい商品作りにも注力。催事場でしか買えない函館の生鮮珍味会社として全国放送のテレビ番組に取り上げられたこともあり、関東を中心に本州、九州では催事出店の常連としてその名を知られ、高級志向の百貨店のニーズに細やかに応えてきた商品の数々は、贈答用としても人気を集めている。
珍味の枠組みを越えた新たな食の楽しみを発信
イタリアン風珍味シリーズは、生鮮珍味になじみがない若い人をターゲットに10年ほど前に開発。珍味の枠にとらわれず、総菜のように楽しめる新たな食品分野の開拓を目指し、3年近い開発期間を経て発売した「まるごとタコのペペロンチーノ」は、道東・釧路市産ヤナギダコを頭から足まで余すことなく使い、ニンニクやトウガラシと一緒に本場イタリアのオリーブオイルに漬け込んだワインにぴったりの一品。一つひとつ手作業で丁寧に下処理し、包丁で大ぶりにカットしたタコは、しっかりと味が染みつつ旨みも濃厚で、パンに添えたりパスタに和えると簡単に高級感ある料理にアレンジできる。その後、消費者の声を直接聞く販売スタッフの意見を形にしながら、トマトソースに唐辛子を利かせた「真いかのアラビアータ」、バジルソースに合わせたピクルスの酸味が爽やかな「いわしのジェノベーゼ」、燻製の風味が香る「つぶ貝のオリーブオイル漬け」と、5種類前後にラインアップを増やし、同社の看板商品へと成長させた。「本州の物産展には必ず出店しているので旅先で探してみてほしい。原料や製法にこだわる分高価ですが、一度食べれば味の良さが分かると思います。地元に全国でも知られる会社があることを知ってもらえたら」と工場長の上鹿渡和則さん。昨年、製品の安全性を確保する国際的衛生管理手法HACCPの要素を含む、日本発の食品安全マネジメント協会認証「JFS‐B」を取得した。今まで以上に信頼される商品を追及し、海外への販売も視野にさらなる飛躍を目指している。
株式会社 味の匠
函館市大森町22‐10‐1
☎0138‐85‐8772
9:00~17:00
土・日曜、祝日定休(水曜不定休)
P有り
ハコラク2024年6月号掲載