日本固有のクラフトビールを造り、世界に通用する味を目指す
地域の魅力を発信するため観光地でビールを醸造
函館・北海道(H)を皆で盛り上げる(M)という企業テーマの頭文字を冠し、2020年に創業した「H.M.Works」は、大正末期に建てられた旧本久商店倉庫をリノベーションし、クラフトビール造りをスタート。21年7月にオープンした「函館麦酒醸造所」併設のブリューパブ「ozigi」では、自社のクラフトビールと地場食材を使った料理を提供。道南で新たな酒蔵やワイナリーの誕生が相次いだことも受け、観光都市・函館の顔と言える西部地区で〝食と酒の街〟をPRしている。現在手掛けるクラフトビールは、ドイツ伝統の白ビール「ヘフェヴァイツェン」や柑橘系の香りが特徴の「APA」などの定番5種類と、季節限定商品。爽やかな香りと強い苦みを持つ「IPA」と日本原産のスダチを使ったビールの「白すだち」は、創業1年目にして国内ビールの品評会「ジャパン・グレート・ビア・アワーズ2022」で銅賞を獲得。今年2月には、函館産のブラックベリーと黒ビール・ポーターを合わせた「ブラックベリーポーター」が同品評会で金賞を獲得した。
ビールが苦手な人も楽しめる独自のビアスタイルを追求
石垣充清社長は、生まれ育った函館を元気にしたいと、地域貢献の方法を模索。知人が本州で小規模ブリュワリーを立ち上げた話から、大型設備がなくてもビール醸造ができると知り、神奈川県のブリュワリーで2カ月間修業。さらに独学で知識と技術を磨いて「函館麦酒醸造所」を立ち上げた。醸造で最もこだわっているのが、飲みやすさと香り立ちの追求。日本人になじみ深い黄金色のビールは、江戸末期に入ってきたピルスナースタイルのラガービールから発展したもので、現在も大手メーカーの商品の多くがこのスタイルを受け継いでいる。しかし、世界で確立されたビアスタイルは100種類以上あるとされ、「さまざまな色や味、香りがあり、まだ日本で知られていないものも多い。従来のビールが苦手な人にも飲みやすく、おいしいと言われる日本固有のビールを造りたい」と、新たなビアスタイルの創造を目指して「白すだち」と「ブラックベリーポーター」を開発。この2品が高く評価されたことで、「コロナ禍で苦しい時期に勇気付けられた」と語り、「ブラックベリーポーター」の定番化も予定している。
地元への思いが支える〝石見式〟の小規模醸造
「ビール造りは知れば知るほど面白く、今も進化し新しいものが出てきている」と語る石垣社長。同社が築いてきた製造工程の特徴の一つは、改造したチェスト型の冷蔵庫とビニール袋を使い、発酵・貯蔵する〝石見式〟と呼ばれる醸造法。麦芽に含まれるデンプンを糖化させ麦汁を作り、沸騰させながらホップの苦みと香りを抽出、煮沸後に酵母が活性化する温度まで一気に冷却させ発酵・貯蔵に移るまで、全ての工程を手作業で行っている。特に香りにこだわる「IPA」や「APA」の醸造では、発酵段階でホップを再投入する「ドライホッピング」をぜいたくに2度行い、グラスから香るアロマと飲んだ時に鼻に抜けるフレーバーを際立たせているという。「お客様においしいものを飲んでほしい、地元を盛り上げたいという強い思いがビール造りを支えてくれた。弊社のクラフトビールを目当てに函館を訪れたり、ビールが飲めなかった方にここのビールはおいしいと言ってもらえることもあり嬉しい。ここから世界に通用する商品を生み出していきたい」と輸出も視野に入れ、さらなる飛躍を誓った。
株式会社H.M.Works
函館麦酒醸造所 ozigi
函館市末広町16‐13
☎0138‐24‐2021
17:00~22:00
(土・日曜は14:00~)
火・水曜定休
禁煙
キャッシュレス決済利用可
ハコラク2023年6月号掲載