耳垢と耳掃除について
患者さんからの質問に「耳掃除はどれくらいの頻度で行うか?」というのがあります。1週間に1回?1カ月に1回でしょうか?私の意見は「ゼロ」です。耳掃除は全くしなくて良いです。これが今回お伝えしたいことの要点です。
耳の穴は外耳道と言います。大人では入り口から鼓膜まで約3㎝の長さです。入り口から3分の1は軟骨部外耳道と呼ばれ、産毛が生えており、耳垢腺という分泌腺が存在しています。分泌物の湿り具合は遺伝で決まっており、日本人は乾いたタイプの乾性耳垢の割合が約7~8割と多く、アメミミやネコミミなどと呼ばれる褐色の湿性耳垢が残り数割と言われています。西欧人では約9割が湿性耳垢です。鼓膜に近い3分の2は骨部外耳道と呼ばれ、骨の上に薄い皮膚があるだけです。ここは傷つきやすく、深く傷つくと骨が露出してしまうことがあり、決して自分で触らないでほしい所です。
鼓膜は直径10㎜弱、厚さが0.1㎜です。鼓膜の上皮は皮膚や爪と同様に少しずつ再生しており、鼓膜の中心から外側に向かってゆっくり移動しています。鼓膜の表面に色素で印を付けると数週間で鼓膜の外側の骨部外耳道に移動し、さらに数カ月で軟骨部外耳道まで移動してはがれ落ちます。こうして新陳代謝で移動する鼓膜や外耳道の上皮と耳垢腺から出る分泌物が合わさり耳垢になります。耳垢は耳の入り口部分から自然にはがれ落ちるようになっています。
自分で耳の穴に道具を入れるような耳掃除はしないことを推奨します。風呂上がりに綿棒は使わずに耳の入り口周囲を優しく手ぬぐいやタオルなどで拭き取るだけで良いでしょう。耳垢栓塞(耳垢が詰まること)の原因は掃除をしているつもりで逆に耳垢を押し込んでいることが大半です。アメリカの綿棒には「耳の穴に入れないで」と記載されています。耳がふさがった感じがする場合には耳垢栓塞になっている可能性がありますので、自分では触らずにぜひ耳鼻咽喉科を受診してください。
(ハコラク 2022年 4月号掲載)
略歴
平成7年、札幌医科大学卒業後に同大学附属病院、滝川市立病院、市立室蘭総合病院勤務、函館五稜郭病院耳鼻咽喉科科長を経て、令和3年10月、やまざき耳鼻咽喉科を開院。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会耳鼻咽喉科専門医。
やまざき耳鼻咽喉科
函館市美原1‐17‐20
☎0138‐83‐8718
https://yamazaki-jibika.com/
■診療科目/耳鼻咽喉科
■診療時間/9:00~12:00
14:00~18:00
※水・土曜は9:00~12:00
■休診日/日曜・祝日