独特の旨味と風味 熟成イカ塩辛の新たな可能性を引き出す
木樽に漬け込む製法で昔ながらの味を守る
伝統の製法でイカ塩辛造りを続ける「小田島水産食品」は1914年創業の老舗。初代・小田島長治さんが函館市大手町に開いた食料品店が始まりで、塩辛造りをスタートしたのは47年のこと。第2次世界大戦後、戦地から復員した2代目の喜一郎さんが、旭川や函館で炭酸飲料水を製造していた「北海屋」の社長・松木盛雄さんの紹介で、留萌市のちくわ製造工場「北産食品」に1年間勤めノウハウを学んだ。勤勉な仕事ぶりが評価され、塩辛製造を開始する時には当時貴重だった塩を提供されるなどの後押しを受け、試行錯誤の末、今に続く製造工程を確立。現在は3代目社長の小田島隆さんが店の味を守っている。主力製品の「木樽仕込いか塩辛」はマイカを原料に、1日塩漬けにした後、木樽に仕込み1週間かけて熟成。深い旨味を生み出すのは、長い年月をかけて木樽に付着した酵母や乳酸菌。菌の働きを助けるために、温度管理に気を付け、毎日木の棒を突き入れて攪拌し空気を含ませる。自然発酵させることで着色料を使わなくてもきれいな桜色に仕上がるという。今では、麴入りなど8種類のイカ塩辛を揃える。
〝ご飯やお酒の友〟は調味料としても万能
調味料「塩辛deアヒージョ」の開発は、客から「調味料代わりにイカ塩辛を使うとおいしい」と勧められたのがきっかけ。創業100周年にあたる2014年に、東京農業大学名誉教授で発酵学の権威・小泉武夫さん監修で開発した、トウガラシを発酵させた新潟県の伝統調味料・かんずりを使う「かんずり入りいか塩辛」を調味料としてアヒージョに使ってみたところ、爽やかな香りとふくよかな旨味が上品に膨らみ、具材の味を引き立てた。「かんずり入りいか塩辛」をPRするためのアレンジレシピとして、地元の素材を使った商品づくりに取り組む「J級グルメ」の販売会で発表するとマスコミに取り上げられ、全道からも問い合わせが相次ぎ商品化に着手。冷やして固めたオリーブオイルに「かんずり入りいか塩辛」を乗せたきれいな層の上に、赤トウガラシ、ニンニクをトッピング。19年に販売をスタートすると野菜や魚介類があれば、家庭でも本格スペイン料理ができ上がる手軽さが注目を集め、土産用としてはもちろん、ホームパーティー、アウトドアレジャーでも活躍する逸品として重宝されている。
マイカ不漁の苦境を跳ね返すアイデア商品を開発
冷蔵庫が一般的に普及していない時代から、保存食として親しまれてきたイカの塩辛は、食卓に、また宴席の肴として彩りを添えてきた。近年、道南のマイカ漁獲量は減少傾向にあり、国産の原料確保に頭を悩ませつつも、昔ながらの味を守るためにも、旨味の塊である熟成イカ塩辛の特性を調味料として生かした商品づくりを模索。「塩辛deアヒージョ」が1万本以上を売り上げる人気商品に成長したのをきっかけに、道産小麦のピザ生地に道産チーズと「木樽仕込いか塩辛」をトッピングした「塩辛ピザ」、「かんずり入りいか塩辛」とせたな町のブランド豚「若松ポークマン」を組み合わせた「塩辛餃子」など地場産の材料を活用した商品を次々と発表してきた。主な商品は築100年以上の倉庫を改装した工場併設の直売所で購入でき、イカ塩辛8種類の食べ比べも可能。ほか一部の商品はオンラインショップ、函館空港売店、七飯町と森町の道の駅、キラリス函館でも購入できる。小田島社長は「大変な時代だからこそ、工夫を重ねて操業を続けたい」と話し、伝統の味を守りながら付加価値を高めた商品開発に挑み続けている。
小田島水産食品株式会社
函館市弁天町20‐7
☎0138‐22‐4312
直売所9:00~19:00
無休 P有り
http://odajimasuisan.com/
ハコラク2022年4月号掲載




