ワインをもっと身近なものに 開拓者精神で挑み続ける
日本人の味覚に合うワイン製造に取り組む
道南を代表するワイナリー「はこだてわいん」は、1973年に小原商店(現・株式会社小原)の果実酒類製造部門が分離し、果実酒類製造業「駒ケ岳酒造株式会社」を設立したのが始まり。84年に本社工場を七飯町に移転し、商号を「株式会社はこだてわいん」に変更。翌年、余市地区の農家と契約し「はこだてわいん余市栽培研究会」を発足して、ワイン醸造用ブドウの栽培をスタート。余市地区を中心に同社が持つワイン醸造用ブドウの作付面積は、現在、日本最大規模を誇る。ISO9001に基づく品質管理体制を北海道で唯一構築し、長年のファンが多いというテーブルワイン「年輪」、自然派志向の「酸化防止剤無添加ワイン」、高級デザートワイン「しばれづくり」、道南産のヤマブドウを100%使ったワイン「木樽熟成 山葡萄」といった多数のブランドを確立。高い技術に裏打ちされた商品の数々は国産ワインコンクール(現日本ワインコンクール)で「金賞」「部門最高賞」などを受賞。今年5月に就任した佐藤恭介社長がかじを取り、社員一丸で堅実なワイン造りを続けている。
北海道産にこだわり幅広いニーズに応える
北海道を代表するワイン造りを目的に販売をスタートした「北海道100」は、原材料が100%北海道産のワイン。キャンベル・アーリー、ナイアガラといった生食用のブドウを使用したフルーティーな「北海道100カジュアルスイート」を始め、ワイン専用品種ならではの本格的な口当たりを贅沢に味わえる「北海道100シリーズ」、こだわりのブドウのポテンシャルを最大限に引き出した「北海道100プレミアムシリーズ」、やや甘口から辛口まで、味、香りともに、赤白合わせてさまざまなワインが揃う。生産農園から収穫、醸造、流通までを明確にするトレーサビリティー(生産履歴管理システム)を強化し〝素性の知れた〟ワインなのも特徴の一つ。余市地区を中心とした道内の契約農家から工場に毎年秋に大量のブドウが運び込まれ、社員ほぼ総出で手を掛けて醸造、工場で瓶詰めされ店頭に並ぶ。いずれも和洋問わず料理との親和性が高く、日々の生活に、また祝いの席に華を添えるアイテムとして親しまれている。
官民一体で盛り上げ地域振興の一役に
近年、国は国産ワインの海外販路拡大を狙いさまざまな政策を打ち出した。北海道や渡島総合振興局でもワイン造りに関するセミナーを主催するなど、国産ワインの品質強化及びブランド力向上に向けて、各行政のバックアップも始まっている。需要の高まりから、小ロットで個性的なワインを手掛ける小規模ワイナリーの市場参入が続く。個性派ワインに熱視線が注がれる中、同社でも道南ワインの製造に着手。おととしから本社近くの休耕地1.7haを利用し、社員によるブドウ栽培を始めた。函館市、北斗市、七飯町などでつくる「みなみおしま醸造用ぶどう産地振興協議会」が策定した計画の承認を受け、数品種の苗木を購入。3000本を最終目標に今年までに1700本を定植、生育は順調だったものの鳥害に合うなどし今年は予定通りにはいかなかった。こうした失敗を教訓に、農協や農家の力を借りて来年こそは成功させたいと手を尽くす。「良質なブドウが栽培できると実証できれば新たな需要が生まれ地元も活気付く。ワインを通じて地域に貢献したい」と佐藤社長は意欲を燃やしている。
株式会社 はこだてわいん
七飯町上藤城11
☎0138‐65‐8115
直営店:はこだてわいん葡萄館本店
10:00~17:00
年末年始および施設メンテナンス日休業
※工場見学は予約制
☎0138‐65‐8170
ハコラク2019年11月号掲載