アイデアと工夫を凝らし食で朝市に地元客を呼び込む
飲食店や小売・通販で北海道の海鮮を提供
「函館北栄株式会社」は確かな目利きで仕入れた函館近海や道産の海産物を取り揃える2004年創業の海鮮問屋。創業者の荒木雅人社長は函館朝市にあった食品問屋「小笠原商事」でのアルバイト経験を経て「函館朝市栄屋」に入社し、経営のノウハウを身に付け独立開業した。05年に観光客をターゲットに飲食と活イカ販売の「お食事処活いかの店北栄」をオープンしたが、地元客にも朝市に足を運んでもらいたいと07年に移転した本社・工場に隣接して、気軽に海鮮料理を楽しめる「函館ダイニング雅家GAYA」を開店。これを皮切りに現在は直営の「海鮮料理と釜めしあらき」「海産物取扱専門店カネダイ荒木商店」、グループ会社として「朝市お食事処山三道下商店」「函館朝市栄屋」を展開する。朝市内の店舗で高評価を得て商品化した「たらこチューブ」のほか、レンジで加熱調理することで完成する程よいイカの弾力が人気の「生いかめし」、店の味そのままを味わえる「海鮮釜めし」など「レンジでポン」シリーズの製造も手掛け、業績を堅調に伸ばしている。
コロナ禍をきっかけに通販の柱になる商品が誕生
昨年5月に販売開始した「函館朝市どんどん海鮮丼」シリーズの開発は、新型コロナウイルスのまん延がきっかけ。客足がほぼ途絶え、店の休業を余儀なくされていた中、売り上げに貢献しようと広報担当の塚田育恵さんを中心に通販サイトを立ち上げ。店の味を家庭でも楽しめるよう「雅家」監修でウニやイクラなど丼の具材を冷凍した「海鮮ぶっかけ丼」を製造。さらに目玉になる商品をと同シリーズの開発に着手した。塚田さんは「他店との差別化を図れるよう研究を重ねました。苦労もありましたが作り出したら完成まではあっという間でした」と当時を振り返る。冷凍庫で場所を取らないコンパクトなサイズ感、分かりやすいパッケージデザイン、耳に残る商品名と細部までこだわったという。道南で水揚げされる魚介を新鮮なまま、またはコンブ締めなどひと手間加えた刺身を主役に、下味を付け刻んだガゴメコンブ、オクラの順に、手作業で丁寧に3層にして詰め、真空パックにして瞬間冷凍。種類はグループ内の5店がそれぞれ監修した「サーモン」「ほっけ」「いか」「たこ」「ほたて」の5種類を揃える。子供でも食べやすい甘めの味付けやトロリとした食感はもちろん、1パック1人前の量で単身でも購入しやすい気軽さ、解凍後にご飯の上へオクラから順に盛り付けるだけで見た目もきれいな丼が完成する手軽さ、自分用にもギフト用にもできる汎用性の高さが口コミで広がった。さらにユーチューブやテレビドラマで紹介されると一気に認知度が高まり、全国からの問い合わせも増加。今年3月に実施された「第67回函館圏優良土産品推奨会」では奨励賞を受賞した。塚田さんは「全て自社で手掛けているため臨機応変に対応できるのが強み。今後はコラボレーション商品の展開やイベント参加で多くの人に商品を通じて店を知ってもらい、朝市にお客様を呼び込んでいきたい」と意欲を燃やしている。
函館北栄株式会社
函館市若松町9‐22 函館朝市ひろば1F
☎0138‐24‐0003
ハコラク2023年11月号掲載