咳喘息の豆知識
普段から呼吸器内科診療に従事していますが、10年ほど前から他院で「咳喘息」と診断されて来院される患者さんが増えてきたような気がします。咳喘息は1970年代にアメリカから「慢性の咳嗽のみが唯一の症状である気管支喘息」として提唱された比較的新しい病態で、現在では気管支喘息の型の一つと認知されています。
8週間以上続く慢性咳嗽の原因の30~40%がこの咳喘息と言われています。
では、気管支喘息との大きな違いは何でしょうか。気管支喘息では咳症状のほかに、胸部や咽頭部から「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」「ピーピー」という音がします。これがいわゆる喘鳴です。咳喘息ではこれらの音を聴取出来ません。しかし、長期間ゴホゴホと咳をしている患者さんの胸を聴診して、喘鳴がなければ単純に咳喘息という診断では不十分なのです。
そこで咳喘息であろうという裏付けが必要となります。検査としては呼吸機能検査や喀痰検査、アレルギー検査、呼気中一酸化窒素濃度測定が有用です。特に呼吸機能検査で気道過敏性の有無を確認することで診断することができます。また、検査を施行できない場合でも投薬に治療効果があることで咳喘息であろうと推測することはできます。
咳喘息の方は普段ほとんど無症状ですが、気管支喘息が増悪するときと同じ原因で咳が出現します。代表的な症状出現の引き金は気道の感染や冷気、運動、アレルギーなどです。気を付けたいのは、成人の30~40%の方が数年以内に気道炎症が持続して典型的な気管支喘息へと移行してしまうことです。そのため、診断後早期に気管支喘息で使用されるステロイド吸入などによる治療が推奨されています。
また、自己判断で治療を中止すると再燃しやすいので、治療期間についてはご担当の医師に判断を委ねたほうがよろしいかと思います。
(ハコラク 2018年6月号掲載)
略歴
平成4年、札幌医科大学医学部卒業。道内各地の病院勤務を経て、平成19年より市立函館病院呼吸器内科科長を務める傍ら、札幌医科大学大学院臨床准教授も兼務。平成28年10月、桐花通り呼吸器内科を開業。日本呼吸器学会呼吸器専門医、医学博士。
桐花通り呼吸器内科
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