知識と信念を注ぎ込む一杯は同業者の舌をも魅了する
函館の自家焙煎コーヒー専門店の先駆けともいえる「横山珈琲店」は1981年、横山俊郎マスターが開業。コーヒー豆の特性を生かして旨味を抽出し、深いコクと芳醇な香りを存分に満喫できるこだわりの一杯は、根強いファンと後に続く店を生み出してきた。
豆の特性を掴むのに欠かせないのは、焼き上がりごとにチェックするデータと独自の分析。横山マスターは「経験や感覚だけで分かることもあるが、数値化し味に根拠を求めることも大切」と、データを刷新し続けている。味にまとまりを求めブレンドするコーヒー豆は中南米産に限定。少しの温度差、湿度差で味や香りが変わってしまう繊細なクセを見極めて、狙った味を作り出す。使用するのは少量ずつを焼き上げる手動焙煎機。規則的に焙煎する機械と異なり、人の手だからこその微妙なブレが加わることで味や香りに絶妙な奥行きを与えるのだという。人生の半分を焙煎の探求に捧げてなお「おいしいとはなんなのか」を自分に問い続け、余計なものを削ぎ落とし、あるいは少し加えてみてバランスの調整を繰り返す。「完成は無い」と真摯に向き合う姿勢をも溶かし込んだコーヒーは、心にも体にも染みていく。
(ハコラク 2021年2月号掲載)
横山珈琲店
函館市宮前町5‐9
☎0138‐41‐1225
10:00~17:00頃
水・木曜定休
禁煙
P有り