函館市南茅部地区の臼尻漁港の程近くに位置する、久二野村水産株式会社は、1963年創業、父祖より六代にわたる地縁を持ち、水産加工をはじめ、先代から受け継ぐ、定置網漁業を行っています。同社の魅力は、何といっても自社の定置網で魚を水揚げ、自社で加工していることです。函館市本通2に直営店を構え、同社の商品を購入することができます。1990年代半ば、6次産業という概念が提唱される前から、取り入れ、実践しています。
同社代表の野村譲さん。高校時代はバンドを組み、市民会館でのコンサートの前座を務めるなど、精力的に活動していました。大学進学のため上京し、卒業後は金沢の漁網メーカーで修行。25歳で南茅部へ帰郷します。
日が暮れると道が暗く、何も見えないような南茅部の雰囲気と、上京してからの生活とのギャップに、何度も逃げ出したくなる日もあったといいます。しかし、今まで築いてきた伝統の味には、根強いファンが多く、「野村さんの商品は別格のおいしさだね」という声を聞くたびに、南茅部で頑張っていこうと思えたそうです。帰郷してから野村さんは、商品開発や漁具の改良、網に関する特許の取得など、多くのことに挑戦してきました。
現在、漁獲量の低下やコロナ禍による飲食店の休業によって、卸先が少なくなるなど、先行き不透明な状況が続いています。そんな中、同社には野村さんのご子息3人が在籍し、会社の若返りが進んでいます。
今後の展望を聞いた時に「他人に言われたことをやるって、誰でも面白く無いので、めったに口を出さない!」とワントーン上げた野村さん。社長があれこれ口を出すことで、社員のチャレンジを止めたくない。社長自身は、やりたいようにやってきた。次の世代にも、やりたいことにチャレンジしていってほしい。野村さんの受け答えからは、そんな気概があふれていました。
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道南でつくられるこだわりの食品を集めた通販サイト「道南地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)