はこだてわいんは1973年に小原商店(現・株式会社小原)の果実酒類製造部門が分離し、果実酒類製造業「駒ケ岳酒造株式会社」を設立。84年に商号を「株式会社はこだてわいん」に変更します。現在は主に後志管内余市町の農家と契約し、ブドウの栽培をしています。
代表を務めるのは佐藤恭介さん。高校時代を札幌で過ごし、大学進学のため上京。その後ヤクルト本社へ就職し、営業やマーケティング、物流などを担当しました。2000年に北海道支店への転勤を機に、北海道へ帰郷。このようにワインの専門分野出身ではない経歴の持ち主。一般の消費者の方に近い感性を持ち合わせながら、15年、はこだてわいんに参画します。
佐藤さんはワイン業界に身を置いて、初めてワインの面白さに気づいたと言います。それは「夢」がないと続けられないということです。日本の酒類市場は縮小傾向にありながらも、ワイナリーの数は大幅に増加しています。まだまだ、ワインを飲む習慣が広がっているとは言えない日本に、ワイン文化を根付かせようという、ある種、「夢」と呼んでもいいような、大きな目標に、日本中のワイナリーが取り組んでいます。
道南も例外ではなく、小規模のワイナリーや海外の大手ワイナリーが参入し、盛り上がりを見せています。はこだてわいんではお手頃価格のワインはもちろん、こだわりの製法で作り上げた高級ワイン、自然派志向の酸化防止剤無添加ワインのほか、お酒が飲めない方でも楽しめるストレートジュースなど、数多くのラインナップをそろえています。「私たちも2017年から自社での葡萄栽培を再開しました。地域で作られたワインを、その地域に住む人たちにおいしいと言ってもらえるようなワインを作っていきたい」と、佐藤さんは曇りのない笑顔で話します。
ワインの事を「わかる」「わからない」という感情で困らせない。ワイン初心者の方でもカジュアルに楽しめるワイナリーを目指して、リーズナブルでありながらこだわりのワインを届ける。ワイン文化の裾野を広げる重要な役割を担う地域の老舗ワイナリーが、「夢」に向かい今日も一歩ずつ歩みを進めています。
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道南でつくられるこだわりの食品を集めた通販サイト「道南地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)