米が主役のポン菓子チップスで、生産者の思いを届ける
付加価値与える商品開発で米の新たな食べ方を提案
1915年の創業から4代続く「澤田米穀店」は、北海道の水田発祥地がある北斗市の米販売店。日本人の米離れが進んでいるとされる昨今、創業者のひ孫に当たる澤田導俊専務は、加賀百万石で知られる北陸地方在住時に、米に付加価値を付ける栽培方法や加工品開発の取り組みに刺激を受け、2015年から地元生産者と協力し、農薬や化学肥料の使用量を慣行レベルの5割以下に削減する「特別栽培米」の生産に尽力。16年に移転した現在の店舗では、北斗市を中心に、道内や南は北陸まで、契約農家から直接仕入れる玄米を、品種ではなく、生産者別に陳列し、注文を受けてから無料で精米するスタイルで、〝生産者の思いを伝える米屋〟を築いている。また、地元の特産品を使った炊き込みご飯や玄米仕込みのクラフトビールなど、米のおいしい食べ方を提案する商品開発も行い、19年に発売した道産特別栽培米100%で作るポン菓子チップス「ふっくりんこJAPON」は、油・化学調味料・添加物不使用の赤ちゃんでも食べられる自然食品として、海外からも注目されている。
赤ちゃんから食べられる米屋ならではのポン菓子
澤田専務が「ふっくりんこJAPON」の開発を考えたのは、長男・晋之介くんの誕生がきっかけ。当時1歳だった息子のために砂糖や塩が入っていない菓子を探したが、思うような商品が見つからず、子供たちが安心安全に食べられる米店ならではの菓子を作ろうと決意。原料は知内町「帰山農園」の特別栽培米「ふっくりんこ」を使用。食の安全や環境保全に取り組む農場として当時、JGAP認証を目指していた「帰山農園」と共同で道経済産業局の農商工等連携支援事業に認定され、道総研食品加工研究センターの技術支援を受けて自社工場を設立した。素材本来の味を生かすため余計なものを一切使わず、チップス状に仕立てた白米ポン菓子は、軽い口当たりに、炊きたてのご飯のような甘味と香ばしい風味が豊かに感じられる。「黒糖きなこ」や「海鮮いわし」などの味付きシリーズは、地元のホッキ貝の削り節と函館産真昆布で取るダシをベースに吹きかけることで、最小限のやさしい味付けで満足感ある一品に仕上げた。それぞれお湯を掛ければお粥として離乳食にもでき、「乳児用規格適用食品」の認定も受けている。
世界基準のニーズに応え業界全体を盛り上げる
ノンフライ製法の米菓子でも、味付けには食用油を使うのが一般的だが、同社の工場では、米の粘着性を生かして味付けする油不使用の独自製法(特許出願中)を確立。この製法では、油による酸化が起きないため1年以上の保存も可能と検査で実証されており、非常食にもなる商品の強みとなった。ヘルシーで作業中に食べても手が汚れにくいという性質は、栄養豊富な玄米を使った大人向けのポン菓子でも人気で、今年の新商品として、石狩管内新篠津村の契約農家の玄米を使う「有機玄米ポン菓子」を発売。海外からのオーガニック商品への需要の高まりもあり、9月から有機JAS認証を受けた新工場の稼働も決まっている。澤田専務は「自分の子供に安心できるものを食べさせたいと始めましたが、世界中の親御さんの気持ちも同じなのだと実感しています。米のおいしい食べ方の提案が店のテーマなので、ご飯としてはもちろん、原材料としての可能性も秘めた米の楽しさを伝え、小売りや製造業を通じて、生産者と一体となって、米業界に良い循環を作っていきたい」と力強く未来を見据えている。
有限会社 澤田米穀店
北斗市中央2‐3‐1
☎0138‐73‐2210
8:30~19:00
日曜、祝日、第3土曜定休
P有り
キャッシュレス決済利用可
https://sawada-gohan.com
ハコラク2021年9月号掲載