地場の水とモルト１００％で仕込む、函館地ビールの元祖

醸造所併設のビアレストランで個性豊かな地ビールを
１９６５年、大手町で鮮魚・冷凍食品の小売業として創業した「魚長食品」を母体に、地域の活性化を目指してさまざまな事業を展開するはこだてマルカツグループ。79年設立の「マルカツ興産」は、旧函館郵便局の建物を活用して「はこだて明治館」を立ち上げるなど、ウォーターフロントの開発に尽力。96年、「はこだて明治館２号館」を改修し、ブルワリー併設のビアレストラン「はこだてビール」をオープンした。醸造タンクを目の前に食事ができる店内では、繊細な泡立ちと白い濁りが特徴的なヴァイツェンビール「五稜の星」、レンガを思わせる赤銅色のアルトビール「明治館」、大麦麦芽仕込みのエールビール「北の一歩」、フルーティな酸味のケルシュビール「北の夜景」をはじめ、期間限定ビールや地場の果物、コーヒーを使った発泡酒を醸造。通常の２倍量のモルトを使用し１カ月熟成、アルコール度数を10％にまで高めた「社長のよく飲むビール」やフレッシュで爽やかな苦みのある「社員の出世するビール」は、ユニークなネーミングも相まって、観光土産やギフトでも人気を集める。

函館山の地下水を生かすべくゼロから地ビール作りに挑戦
元々は醸造ノウハウを一切持たなかった同社が、ビール製造に乗り出したのは、函館山の地下水の活用法を模索したのがきっかけ。自社の土地で汲み上がる函館山の伏流水がビール醸造に適したミネラル豊富な硬水だったことから、９４年の酒税法改正を機に日本中で本格化した地ビールの製造に着目。設備やノウハウを持った酒造メーカーの新規参入が多かった当時の地ビール業界で、イギリスの醸造家を招いて技術を学び、ホテル事業で親交のあった「アサヒビール」の協力を得るなど、ゼロから「はこだてビール」の礎を構築。函館で第１号となる地ビール製造免許を取得した。約２年の準備期間を経て、レストランの開業と同時に発売した地ビールは、２０００年、全国地ビール醸造者協議会創設のコンテスト・ジャパンビアグランプリで、レギュラータイプ３銘柄が各部門で銀賞を受賞。後年発売した「社長のよく飲むビール」が、０２年、日本地ビール協会主催のインターナショナル・ビア・コンペティション、ストロングエール部門で金賞を受賞するなど、立て続けに高く評価されるに至った。
　
27年愛される味を守り次世代にもファンを生み出す
創業時にカナダから輸入したブリューテック社製の醸造設備は、１度に１０００ℓを仕込む規模ながら、職人の管理が欠かせない昔ながらのマシン。生きた酵母をそのままに閉じ込める「はこだてビール」は、発売当初は保存期間が冷蔵で２週間と短かったが、現在は鮮度を生かしつつ保存期間を２カ月に延ばすなど技術の向上に努めてきた。醸造責任者の岩名寛祐さんは、「仕込みの工程一つひとつに味が変化するポイントがあるのが、ビール造りの難しさであり面白さ」と、受け継ぐレシピをベースに、収穫時期によって苦みの出方や風味が異なるホップやモルトの状態を見極めて原料を配合。加熱温度、熟成時間の調整から１本１本手作業で瓶に詰めるところまで、１日中付きっ切りで製造に当たる。醸造の熱気を間近に感じ、作業風景が垣間見えるレストランでは、自慢のビールとのペアリングを楽しめるバラエティー豊かな料理はもとより、仕込みにビールを使うメニューも用意。修学旅行生を受け入れ、アルコールが飲めない人も楽しめる店作りを心掛けるなど、次世代にも愛されるビール造りにレストラン全体で取り組んでいる。

株式会社 マルカツ興産 はこだてビール
函館市大手町５‐２２　
☎０１３８‐２３‐８０００　
１１：００～１５：００
１７：００～２２：００（２１：２０Ｌ.Ｏ）
※季節により変動
水、第２木曜定休　
禁煙　Ｐ有り　
キャッシュレス決済利用可　
https://www.hakodate-factory.com/beer/

ハコラク2023年4月号掲載