素材が引き立つ優しいダシで季節を問わず愛されるおでん
今から58年前、宝来町でのれんをあげた「おでん冨茂登」。かつて芸者として座敷に上がっていた先代の大女将・尾形京子さんが店を開き、長男の成一さんと信子さん夫妻がその味を受け継いできた。本町に移転し14年目。創業から使う銅製のおでん鍋はまばゆいばかりに磨き込まれ、継ぎ足しながら守るダシの香りがふわりとカウンターに漂う。ほろほろと口の中で解ける大根からロールキャベツ、アボカド、トマトといった変わり種まで、素材の味を引き立てる優しいダシの味わいは、具材から染み出す旨みや水分で刻々と変化するため常に調整が欠かせない。「おでんは生き物のよう」と話す信子さんは、「玉子」を絶妙な半熟に仕上げるなど、どの具材も最良の状態で味わえるよう鍋の様子に気を配る。おでんのほか、地魚の刺身やイカ墨入りの「黒ザンギ」といった料理もさまざまあり、重量感たっぷりのおでんを堪能するも良し、ユニークな料理で杯を傾けるも良し、この店の魅力は季節を問わない。
(ハコラク 2019年11月号掲載)
おでん 冨茂登
函館市本町4‐9 五稜郭ハイム1F
☎0138‐55‐7799
17:30~22:30(22:00L.O)
月曜定休 喫煙可