労を惜しまず手間暇掛けて 江戸前の味を守り続ける
自家製麺は風味豊かでつるりとした喉越し、独自の方法でとったダシと特製かえしを合わせたそばつゆは濃い目。函館では珍しい江戸前そばを提供している「東京庵本店」は昭和11年創業。料理上手で有名だった初代・佐野タキさんが中心になり、東京から職人を呼び寄せ、現在の場所に開業したのが始まりで、今は3代目の康文さんが昔ながらの味をつないでいる。「店を継ぐのが当たり前の感覚だった」と東京の大学卒業後、婦人服メーカー勤務を経て、康文さんが厨房に立ったのは40年ほど前。麺は当時の従業員たちから、つゆは2代目である父・寅四郎さんが書き残した配合表から学んだ。「手間暇惜しまず時間を掛ければ、おいしいものを安く提供できる。そうすれば自然にお客様は来てくれる、というのが父の口癖だった」と懐かしそうに笑う。時代の変遷と共に店の在り方を変え、新しいメニューを加えながらも、その言葉を今も胸に、変わらぬ味を振る舞い続けている。
(ハコラク 2019年5月号掲載)
東京庵本店
函館市末広町4‐24 ☎0138‐22‐1121
11:00~16:00 (土曜・祝日は15:00まで)
日曜定休 喫煙可
P有り