見えないものを形作る面白さを伝え
世界に誇れる技術を次世代に残したい
水道管、船舶のパーツ、食品メーカーの機械部品、タコストーブ…鋳物が支える分野は驚くほど多岐に渡るが、製作工程で真っ先に作られる木型の存在を知る人は少ない。鋳造のために溶かした金属を流し入れる鋳型は、原型となる木型の周りを砂などで固めて作られており、「ウエノヤマ技巧」は函館市内唯一の鋳造用木型の製作所。30年木型職人として歩んできた上野山さんは、「鋳物は砂型から取り出すまで誰も中を見られないので、木型という道具で見えない部分を形作ります。完成形をイメージしながら図面を起こし、型の中で溶かした金属が滑らかに流れるよう考え、次の工程を託す職人の使い勝手を工夫する。目の前の形だけでなく、先を想像しながら作るのが面白い」と仕事にのめり込んできた。
工具を細かく使い分け榀製の合板ベニヤから0.1mmの誤差も許さず精密に削り出す木型は、海外からの注文もあり必要とされる仕事だが、製品の多くは人目に付きにくく、後継者不足が課題だ。「作品が目に留まり、鋳型に興味を持ってもらえたら」と五稜郭型のジンギスカン鍋や大砲型のポン菓子製造機などユニークな作品も手掛け、最近では天然昆布の減少を憂う漁師を助けようと、昆布を根付かせる鋳造製品を開発した。「子供の頃から工作が好きで、規模は違うけれどやっていることは昔と変わらない」と笑う上野山さんは、人の役に立つ製品で鋳型の技を残そうと挑戦を続けている。
(ハコラク 2020年7月号掲載)
ウエノヤマ技巧
函館市陣川町86‐33
☎0138‐55‐1002
https://www.uenoyamagicou-technical.com/