常に新しい技法に挑戦し生み出す
機能性を兼ね備えた美しい器
堂前さんは歴史的建造物の旧梅津商店をギャラリー兼店舗とし、アトリエも併設。店内に飾られている大小さまざまなカップや皿に繊細なタッチで描かれているのは身近な自然の草花。食器としての実用性はもちろん、見ているだけで心癒やされる優しい配色はインテリアとしても空間を美しく飾る。堂前さんが初めて陶芸に触れたのは短大での授業で、土で思うままに形を作っていくうちに、造形の面白さに魅せられた。卒業後、国内で基礎を学び、「日本の焼き物との相違点を見たかった」と、ワーキングホリデービザでオーストラリアへ渡航。その後ニュージーランドで出合った工房一体型の店が新鮮で理想的に見え、独立後の制作スタイルを決定付けた。
中庭で自然に触れ、穏やかな時間を過ごしているうちにアイデアがどんどん湧き上がり、作品の構想を練っている時、一番心が弾む。「陶器は使ってもらってこそ」だと言い、手になじむような質感を考えて土を練る。ろくろを回し指の感覚だけでほぼ同じ大きさに仕上げ素焼きした器をキャンバスに、色を置くようにして彩色し身近な植物の姿を描き出していく。人類史上最も古い工芸技術の一つとされる陶芸だが、突き詰めていくほど新しい技法が生まれて果てがない。「この先10年、自分はどんな作品を作っていけるのか、いつも探っています」と話す堂前さんの声に、作陶への情熱が透けて見える。
(ハコラク 2020年7月号掲載)
はこだて工芸舎
函館市末広町8‐8
☎0138‐22‐7706
10:00~18:00
P有り 無休