定年を機に“好き”を仕事に
喜ばれるメニューを常に考え
独自の味を追求する
2019年にオープンした「手打ち蕎麦 蔵山」は、夜営業の居酒屋「棚からぼたもち」の店舗を間借りし、昼にだけ暖簾を掲げるそば処。店主の藤谷博之さんは元・函館市役所の職員。そば打ちを始めたのは20年前。当時、南茅部町営の昆布直販・加工センター長として地元コンブを活用しようと、コンブを練り込んだそば作りに励んだのがきっかけだった。以来趣味としてそばを打ち続け、定年退職を機に「人生最後の挑戦」との思いで念願の店を始めた。
粉の一粒まで意識した水回し、丁寧な練り上げ、隅々まで均等な厚みに仕上げるのし。工程の一つひとつに細やかに心を配る藤谷さんがそば打ちに使うのは、その時期の最も良いものを厳選して仕入れる、北海道産のそば粉と小麦粉。そば粉は石臼挽きの粗い粉と細かい粉、2種類を配合し、コシの強さの中にもふわっとしたやわらかさも感じる独特の喉越しを追求。ダシには1年以上熟成させた鹿児島県枕崎市産カツオの本枯節をはじめ、かつて東京の老舗そば店の名人も隠し味として使用していたという南茅部地区産の真昆布を合わせることで、すっきりとしたキレのあるつゆに仕上げている。「鴨せいろそば」のつゆには、ほんのりと赤みを残すやわらかな鴨肉の旨みと香ばしい焼きネギの甘味が染み出し、そば湯を注いで最後の1滴まで飲み干さずにはいられない。
「うちの味を好んで通って下さる方のためにも常に同じ味を作り続けたい。南茅部町職員時代から、魚のさばきも含め料理には特に興味が深かったので、それを生かしたメニューも振る舞えたら」と、四季折々の工夫を凝らす「季節のお蕎麦」や「そば団子」「そば湯の寒天・黒蜜かけ」といったオリジナルスイーツも考案。サービス品として「そば味噌」も仕込むなど、食べる人の喜ぶ顔をやりがいに挑戦を続けている。
(ハコラク 2020年10月号掲載)
手打ち蕎麦 蔵山
函館市本町34‐14
☎090‐8904‐3740
11:15~14:00L.O
※そばが無くなり次第終了
火・水曜定休(祝日の場合は営業)
禁煙 P有り(10台)