指先で“そばの声”を聞き長年磨いた技術で打つ
通の舌も満足させる本格派
「自分のそば打ちと妻の陶芸、両方の趣味を生かして第二の人生に生きがいを持ちたい」と溝江秀次庵主が2019年1月、住宅街の一角に暖簾を掲げた「手打ち蕎麦うさぎ庵」。会社員時代に赴任していた東北でそばに魅せられ、帰函後に趣味でそばの手打ちを始めた溝江庵主は最初に「ななえ手打ち蕎麦愛好会」を、続いて仲間と一緒に「北斗蕎麦打ち倶楽部」を立ち上げて技術を磨き、全麺協認定素人そば打ち段位認定会で4段位と、地方審査員資格を取得。甘みと風味が好バランスの「外二」、味も香りも際立つ「挽きぐるみ」と、その腕前を発揮して打つそばは、舌の肥えた通たちをも、うならせている。
毎朝5時に店の工房に立ち、その日提供する分のそば打ちをスタート。音威子府村「キタワセ」、幌加内町「ほろみのり」、江丹別町「江丹別」と旬によって産地を変え、石臼で挽いてもらった独自配合のそば粉を使用する。「そばは水1滴の差でがらりと風味が変化する繊細さを持つ。水回しで味の8割が決まる」と言い、その日の温度や湿度を加味し、指先の感覚を研ぎ澄まして〝そばの声〟を聞き水分を微調整。水と一緒に空気を粉に含ませ、軽くなめらかな喉越しになるよう丹念に混ぜ合わせていく。手早く力強く練り上げて平らに伸ばし、甘みがより感じられるよう打ち方によってカットする太さを変えるそばは、つゆにつけても、本来の味を楽しめる岩塩をかけても美味。つゆはカツオをメインにコンブ、シイタケの旨味をじっくりと抽出したダシを使い、やや甘めに味を調えた。客の声を何よりも大切にし「厳しい言葉も勉強になり今後の糧になる。そば打ちは難しくて正解がないからこそ、探求していくのが楽しい」と、さらに腕に磨きをかけていく。
(ハコラク 2020年10月号掲載)
手打ち蕎麦 うさぎ庵
函館市桔梗5‐13‐52
☎0138‐47‐0028
昼の部11:00~14:30
甘味・喫茶14:00~16:00
夜の部は土・日曜のみ17:30~20:00
(19:30L.O)
※いずれもそばが無くなり次第終了
木、第1・3水曜定休
禁煙 P有り