函館市漁協の函館サーモン養殖部会(松川雅樹部会長、部会員5人)が取り組むトラウトサーモン(ニジマス)の今季水揚げが27日、函館漁港で始まった。1匹あたりの平均重量は約3キロ、生存率も85%と高水準で、7月12日まで計14回、前年並みの1万匹(30トン)の生産を見込む。29日から道南のスーパーなどの店頭に並ぶ。
初日は午前7時から、漁業者や水産加工会社、大学生計18人がタモ網を使い、いけす(1基12メートル×12メートル、深さ3・5メートル)から700匹を水揚げ。船上で活締めし、海水氷で脱血処理を行ってラウンド(丸魚)に加工、氷の中で熟成を進めた状態で販売する。道南のスーパーや飲食店、鮮魚店、回転ずしに出荷するほか、東京や名古屋、札幌、仙台にも送り、一部は米国の日本料理店にも届ける。
いけすは全6基あり、魚は昨年11月から養殖し順調に成長。普段は魚粉の配合量が多い上質な餌を使い、仕上げにイカパウダーを混ぜ込んだオリジナルの餌を与えるなど、餌にもこだわる。松川さん(38)は「日本で一番手間暇かけていると自負している。上質な脂が乗ったおいしい魚をぜひ味わってほしい」と話す。
市漁協は、天然魚の不漁で漁業者を取り巻く環境が厳しさを増す中、育てる漁業に活路を見出すため2021年に部会を結成しトラウトサーモンの海面養殖に着手。「函館サーモン」の名称で商標登録している。今季で4年目を迎え、函館サーモンの認知度も高まった。松川さんは「コストを抑えるため、事業規模の拡大が必要」と先を見据える。(山崎大和)