〝京友禅を通して着物文化の継承に情熱を傾ける〟
江戸時代前期から中期にかけて扇絵師・宮崎友禅斎によって考案された染色技法「京友禅」。豊かな色彩と四季折々の花鳥風月を絵画的に表現する友禅模様は、京都を代表する伝統工芸品として世界中の人々をも魅了してきた。全国にある友禅染は、完成までに10~20の工程があり、京都では主要な工程ごとに専門の職人が担う完全分業制を敷く。
京友禅作家の景澤富佐子さんは、2006年から函館に工房を構え、呉服店運営の傍ら創作活動に取り組む。図案の下書き、防染のための糊置き、模様に色を挿す友禅挿し、彩色部分を保護するための蝋伏など、主要な工程の多くを一人でこなす。作業工程の中で一番の難所かつ達成感のあるのが図案づくり。京友禅は古典柄から現代的な図柄まで幅広く、伝統工芸の枠から外れない範囲で作家の個性が色濃く出るのが魅力の一つ。自然の草花や専門誌を参考に、着物を仕立てた時のバランスを考慮してデザインや図柄の配置を練り上げ、原寸大の図案を作成する。「制作は細かい作業の繰り返し。自分の世界に没頭し無心で取り組む分、完成した時の喜びはひとしお」とはんなりと笑う。
作品は華やかな大輪のガクアジサイなどの花々や、かわいらしい日本の玩具、モダンな黒猫など多種多様。「特別な場はもちろん普段着感覚で着てほしい」と、訪問着や小紋、帯、帯揚げ、ハンカチほか、インテリアにもなる染額も手掛ける。作家としての表現力と商業的な視点との調和を大切にしながら制作に打ち込み「数年内に個展を開催するのが目標ですね」と目を輝かせた。
(ハコラク 2025年6月号掲載)
京友禅染工房 彩夢
函館市駒場町6‐16‐103(景澤呉服店)
☎0138‐32‐9770
10:00~18:00
※12~4月は17:00まで
木曜定休
P有り
クレジットカード利用可