鉄と自分を見つめて半世紀
今こそ残したい鍛冶という仕事
西部地区を彩る店の看板、大型書店の暖炉フード、繊細な装飾が美しい鉄柵…杉本昭二さんが手掛けた鉄製作品を、知らず知らずのうちに目にしている人は多いだろう。鍛冶職人だった父の仕事を幼い頃から見て育ち、「杉本鉄工所」を受け継いだ杉本さんは、機能性や効率が重視されやすい時代に、「手間と時間をかけ鉄の本質を見極める鍛冶の仕事を残したい」と、昔ながらの工法に立ち戻り「洋鍛冶工房杉本」を営んできた。800℃に達するコークスで真っ赤に熱した鉄を、重厚なハンマーで一振り一振り打ち付けていく。頭の中にあるデザインが仕上がる頃には、全身から汗が吹き出し、腕もけいれんするというが、「人の何倍もの時間を掛けて形にする間、自分を叩き、自分を見つめ、自分を作っている。その時間がゆるくないけど好きだな」と語る。ギャラリーで展示販売する作品には叩いた跡「ハンマートーン」が色濃く残り、焦らずたゆまず一心に歩んできた杉本さんの“鍛冶屋の時間”の証がしっかりと刻まれている。
(ハコラク 2020年4月号掲載)
洋鍛冶工房杉本
函館市深堀町30‐26
Gallery杉本
函館市深堀町31‐5
☎0138‐53‐2912
11:00~17:00
金・土・日曜のみ営業
P有り