調味商品やオーダー捕獲で
シカの活用法を広げる
「函館ジビエ舎」は、今年4月にオープンしたエゾシカ肉処理施設。2019年から有害鳥獣の駆除に取り組むNPO法人「モダンハンティングin北海道」が、主な猟場とする戸井・恵山地区にほど近い豊浦町の高台に立ち上げた施設で、監事の横山満さんをはじめ、函館近郊のハンター27人が参加。道南で増え過ぎたエゾシカの有効活用を目指して活動している。
エゾシカの捕獲時に銃1発で仕留め損ねたり内臓を傷つけると、肉に血が回り臭みが出るため、こだわるのはネックショットやヘッドショットによる〝クリーン・キル〟。道南唯一の環境省認定鳥獣捕獲等事業者として、メンバーの半数以上が医師、看護師、上級救命講習を受講した有資格者という同法人では、義務付けられる射撃練習のほか、年5回以上の練習記録会を開催。安全に猟銃を扱うのはもちろん、射撃技術の向上も積極的に図り、エゾシカをできるだけ苦しませず、より良い状態で食べてもらえるよう努めている。
シカ肉の処理を担当するのは、調理師、食品衛生責任者の免許を所持する8人の所属ハンター。捕獲現場で最小限の切開により放血したエゾシカを、平均1時間以内に施設まで運び、手早く内臓を取り除いて半割り。枝肉を約5℃に保つ冷蔵庫に吊るし24時間以上かけ血抜きしながら余分な水分を落とした後、北海道ジビエ認証のカットチャートに基づき、バラ、背ロース、ヒレ、腕、モモなどに切り分けていく。市内であれば熟成させた生肉をチルドパックで販売でき、冷凍肉にはない鮮度の良い味わいを提供できるのが強みだ。
道内で捕獲されるエゾシカのうち、食肉利用されるのは全体の10%ほどで、火入れが難しく調理の手間がかかることが普及の課題の一つとされる。そこで、料理人歴30年以上のメンバーも所属する同法人では、手軽に味わってもらう取り組みとして、シカ肉のオリーブオイル漬けや味付きジンギスカンなど、化学調味料不使用の調味済商品を開発し、飲食店や個人向けに販売。シカは性別や年齢によっても肉質が変わるため、料理人の要望に合った個体を選んで捕獲する〝オーダーメイド捕獲〟にも対応し、繊細なエゾシカの味わいを生かす活用法を提案している。
(ハコラク 2024年1月号掲載)
函館ジビエ舎
函館市豊浦町160‐2
☎0120‐913‐609[無料通話]
問い合わせ/9:00~18:00
不定休