函館元町ホテル(大町、遠藤浩司社長)は、明治時代に建てられ、空き家となっていた同町内の建物を取得、今月下旬をめどに同ホテル別邸「開港庵」としてオープンする。遠藤社長(57)は「歴史的な建造物を再生し、函館の良さを発信したい」と話している。
建物は1909(明治42)年、海産商の旧森卯兵衛商店として建築。木造2階建てで、延べ床面積約340平方メートル。1階と2階の造りが違う一般的な和洋折衷建築とは一線を画し、正面が和風、奥が洋風なのが特徴。海産商の後は日魯漁業の診療所として使われたほか、戦後は民宿などに活用されたが、約5年前から空き家となっていた。
同ホテルは今年2月に土地と建物を取得。取得費と合わせて約6500万円をかけて改修した。周辺には新島襄の海外渡航の地碑があり、ペリーの上陸地にも程近いことから「開港庵」と名付けた。遠藤社長は「西部地区で歴史的な建物が壊されて更地になると取り返しがつかない」と取得の意図を語る。
すべて洋室の10室(ツイン6室、トリプル4室)、定員25人とし、1階にカフェやレストランを設ける。宿泊料金は1人5000~1万円程度に設定した。今月23日の部分オープンに向けて準備を進めており、7月1日に開かれる函館マラソンに間に合わせる形で全面オープンする考え。
同ホテルは本館とホテル函館山(元町)に続き3軒目の経営。遠藤社長は「効率の良い経営を目指したい」と話すとともに「幕末から明治にかけて近代化のきっかけになった函館のまちの特色を生かしていきたい」としている。(千葉卓陽)