かつら大手のアデランス(東京)が昨年11月に開催した社内の全国技術競技大会で、アデランス函館(函館市本町)勤務の崔(ちぇ)かな子さん(37)が美容部門で優勝した。ウィッグのスタイリング力を競う大会で、今年4月に創業50周年を記念した初の世界大会に出場する。崔さんは「応援や力を貸してくれる方々の期待に添えるように力を尽くしたい」と意気込んでいる。
崔さんは函館稜北高校卒業後に上京し、美容室で働きながら美容学校で資格を取得、結婚まで美容師として働いた。出産を経て、2016年に家族で函館に戻り、数年のブランクがあったが「育児をしながら好きな美容の仕事ができる」環境が整った同社の求人に応募。同年11月から函館の店舗で勤務している。
同社には全国で理美容師の有資格者約1000人が在籍し、技術力向上を目指した社内大会を開催。崔さんを含め、全国8エリアの予選を勝ち抜いた2部門計21人が昨年の全国大会に出場した。
大会では、人毛のキューティクルを再現した同社開発の人工毛髪「サイバーヘア」を用いたウィッグが取り付けられたマネキンを使用。形状記憶にも優れ、自宅で洗浄した後も自然なスタイルを保持できるという商品で、販売時のオーダーメイド品と同様、出場者が毛髪の色や量など事前に発注したものが用意された。
大会直前まで上司や同僚らからの助言を受けて、イメージを固めたという崔さんは、赤と黄色のメッシュが入った毛髪で5つのロールを作り、「和」と「花束」をイメージ。どの角度からみてもブーケに見えるように工夫した。
同社の根本信男会長、津村佳宏社長ら審査員44人や多くの関係者がひしめく競技会場は緊張感があふれたが、崔さんは最前列だったことも幸いして作業に集中できたという。「大会に出させていただいたことも他の人の作品も勉強になった。ただ、優勝は頭にはなかったので、結果発表後の方が頭が真っ白になってあまり覚えていない」と振り返る。
同社は世界18カ国・地域に62社のグループ拠点があり、各国で同様の予選が行われている。世界大会に向け、崔さんは「試行錯誤の最中で焦りはありますが、お客さまからの声が励みになっています」と話し、新たなスタイリングの考案に力を注いでいる。(今井正一)