【鹿部】鹿部産の養殖コンブのガニアシ(仮根)を与えた羊のジンギスカンが1月29日、鹿部町の小中学校などの給食に提供された。北大水産科学院修士1年の辻井豪佑さん(24)の研究の一環で、普通の飼料だけを与えた羊肉よりうま味成分のアミノ酸が24%ほど多いという。「おいしい」と喜ぶ子どもたちの笑顔を前に、辻井さんは「成果を上げ、社会に還元したい」との思いを新たにしている。
羊は流山(七飯町)の大沼流山牧場で飼育し、鹿部の漁業者から提供してもらったガニアシを添加した飼料を与えた羊と、通常のえさだけを与えた羊を8頭ずつに分けて対照実験を行っている。
辻井さんは大学3年の夏、流山が後志管内積丹町で運営する牧場で羊のえさやり体験をした時、ウニ養殖の副産物だというホソメコンブを渡されたのに衝撃を受け「コンブを与えた羊はおいしくなり、病気にも強くなる」というスタッフの話に興味を引かれた。
「羊飼いの体感に科学的なエビデンス(証拠)を与えられたら」という思いを抱いて、大学4年のおととしから同社の協力で研究をスタート。ガニアシは固すぎるため人間の食用には向かないとして捨てられており、未利用資源の活用も狙いだ。
今回、給食に提供した羊は2頭。肉本来のうま味を味わえるよう、塩麹で味付けし、300食を調理した。鹿部小の佐藤魁心君は(12)は「塩味でとてもおいしい。また食べたい」とにっこり。
辻井さんは、新年度に十勝管内新得町などでも実証実験を行い、論文にまとめる。(神部 造)