函館市元町の国重要文化財「旧相馬家住宅」(東出伸司代表)が16日から、2019年11月末以来、約1年半ぶりに開館する。新型コロナウイルス流行や来館者の状況を見ながらの暫定営業となるが、相馬家ゆかりの新たな展示物や講演会などのイベントも計画。建物の修繕にも力を注ぐ。
函館の礎を築いた豪商・相馬哲平(初代)の私邸として明治末に建てられた。東出代表(81)が2009年に購入し、多額の私財を投じながら維持管理し、10年から毎年一般に公開し、18年には重文に指定された。昨年はコロナ禍を受け、開館しなかった。
今季は水曜、木曜日を休館日とし、開館時間を午前10時から午後3時までに短縮。来館者用の音声解説機器があるため、スタッフによる説明は取りやめ、一部展示室は、室外から眺めてもらい、負担を軽減する。
当面、旅行会社のツアーの予定はなく、運営上の見通しは厳しい。コロナ禍の状況が悪化した場合は、休館ではなく閉館とする方針も固めた。東出代表は「国も重要文化財として残そうと決めたのでしょうから、開館は責務。楽しみにしている方もいるので」と話す。自身の体への負担もあり、開館中の滞在は午後の短時間にするつもりだ。
再開に合わせて、相馬家関係者が守ってきた仏壇を譲り受け、仏間に収めた。明治期に曹洞宗の永平寺(福井県永平寺町)から贈られたもので、閉眼供養済み。東出代表は「彫刻もすぐれた工芸品として見てもらえれば」と話す。一方、松前藩の絵師、小玉貞良が18世紀中頃に描いた、六曲一隻の屏風「江差屏風」はこのほど、「今後、100年でも150年でも北海道のためになるのなら」と道に譲渡した。
昨年の休館中には建物裏手の塀の一部を修繕。今年はトタンぶきとなっている屋根の一部を瓦屋根に戻す作業を進める計画。6月には歴史講演会などイベントも計画する。入館料は、一般900円、大学生800円、高校生500円、中学生以下300円。問い合わせは(0138・26・1560)へ。(今井正一)