五稜郭タワー(中野恒社長)はこのほど、展望台1階のパネル展示を「世界の稜堡(りょうほ)式城郭」にリニューアルした。国の特別史跡・五稜郭跡と同じ技術で作られ、世界にある城郭や要塞、囲郭(いかく)都市をパネルやタッチ式モニターで紹介している。
同社の木村朋希室長が、函館市民の「五稜郭がなぜ星形なのか知らない」や、近年利用客が増えているインバウンド(訪日外国人客)の「自国にある稜堡式城郭が函館にもあるとは知らなかった」との声に応え、函館と五稜郭に一層興味を持ってもらおうと企画。
「稜堡式城郭」は、15世紀にイタリアで考えられたとされ、戦闘時に正面からの射撃だけでなく、側面からも射撃を併用できる利点がある。16世紀に欧州で流行し、世界中で建設された。日本は開港地となった箱館で、武田斐三郎が仏軍艦の副艦長から指導を受け、写し取った図面から五稜郭と弁天台場を設計した。
木村室長はインターネットを利用し、1年半かけて世界の城郭など約510カ所を調べ上げた。各地の自治体の解説を翻訳する中「世界で起きた戦乱の歴史と、人々を守ろうとした切実な思いを感じることができた」と振り返る。
パネル展示では世界地図に所在地を示しているほか、「死角を消す」という稜堡式の特長などを解説。モニターでは形、年代、地図から城郭などを検索することができる。「世界中の稜堡式城郭を海外の人にも知ってほしい」と木村室長。斐三郎が欧州から取り入れた技術を世界に〝逆発信〟しようと意気込む中、「新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内外からの客が激減。早く収束を」と願っている。(山崎純一)