青森大学(青森市)が昨年度に実施した北海道新幹線開業に関する意識調査で、函館市民で5割、北斗市民の6割が「新幹線で出かけたい気持ちが強くなった」と考えていることが分かった。観光客の増加や市の知名度アップを好ましい要素として捉えている一方で利用頻度は少なく、新駅周辺の開発が依然として進まない点や並行在来線の料金アップなど、ネガティブな変化を感じ取っている側面もみられる。
調査は昨年8月、「新幹線開業に伴う住民の意識変化」をテーマに、函館、北斗、青森の3都市で各300人を抽出して調査票を郵送。函館58人(19・3%)、北斗80人(26・7%)、青森89人(29・7%)から回答を得た。
北海道新幹線に対する評価(複数回答)は「新幹線で出かけたい気持ちが強くなった」が函館で51・7%、北斗で61・3%でそれぞれ最多。「仙台や盛岡、八戸が身近になった」と答えた人も函館46・6%、北斗55・0%と多かった。青森では「東京や首都圏が身近になった」が49・4%で最多だった。
新幹線がもたらした好ましい変化(同)では、函館の最多回答が「市を歩いている人や観光客が増えた」(62・1%)、北斗の最多回答は「市の知名度が上がった」(57・5%)。「行き来が活発になった」も函館50・0%、北斗で46・3%あった。
心配な変化(同)としては「新幹線駅一帯の開発が進んでいない」が北斗65・0%、函館44・8%、青森52・8%でいずれも最多。このほか、北斗では「観光客が増えていない」、函館は「並行在来線が不便で高くなった」、青森は「料金が高くなり、対岸を訪れにくくなった」との回答も目立った。
また、新幹線の利用回数は「利用していない」が3市ともトップで、「1~2回程度」が函館で37・9%、北斗27・5%、青森15・7%。新幹線で出かけた行き先に関する問い(同)では、青森市が「函館市中心部」が最多回答だったのに対し、函館は東京・首都圏と青森付近が同率でトップ。利用目的(同)は3都市とも「観光」が最も多かった。
記述回答では「東京発の最終時間が遅くて便利」「他の手段に比べて乗り降りが楽」など期待する意見のほか、「青函の結束を活発化させるにはこの地域だけの料金制度があってもいいのでは」「割引切符がネット限定なのは案外不便」といった声もあった。
調査を手掛けた同大の櫛引素夫教授は、道南2市で仙台や盛岡、八戸が身近になったという回答が2番目に多かったことについて「両市の市民の意識が東北や本州全体に改めて向いている様子が分かる」とする一方、青森側は函館へ行く交通手段として認識され、道南全体への関心が乏しいと指摘。「青函地域の人口減や経済の低迷を背景に、期待感と不安が映し出されている。新駅前の利活用が進まないことが不安感の原因になっている」としている。(千葉卓陽)