道総研中央農試(岩見沢市)は、長年北海道米を支えてきた代表的な品種「きらら397」に替わる新品種「空育195号」を開発した。多収で病気に強く、丼物など業務用適性に優れるのが特徴。道南を含む全道8000ヘクタールで普及を見込み、2024年度に一般栽培が始まる。
きらら397は1988年にデビューし、北海道米のイメージを一新したコメで、適度な粒感があり、たれ通りが良く、丼物などに向く。
コメの用途別の消費割合(20年度、全国)は家庭内食が69%、中食・外食が31%を占め、中食・外食需要が重要となっている。中食・外食向け品種には、収量が多く、値頃感があって一定の品質で安定供給でき、病気に強く農薬使用量を減らすことが求められる。 空育195号は、多収品種の「空系12238」と「空育184号」を交配して誕生。玄米品質がやや劣る欠点があるものの、きらら397に置き換わる品種として期待が高い。
空育195号の特徴は、面積あたりのもみ数が多く、きらら397に比べ収量が18%増。試験の結果、渡島、桧山管内を含む道内全地域で安定して優れた収量性を示すことが分かった。
稲の病気で多い「いもち病」に対する抵抗性は、葉いもち、穂いもちとも「強」で、薬剤(殺菌剤)防除が不要。ただし、カメムシ対策として殺虫剤はまく必要がある。
実需者の評価によると、牛丼や弁当のご飯、冷凍チャーハンなどの適性はたれ通りが良いなど、きらら397並みの評価を得た。
耐倒伏性は稈長(かんちょう)が長く、穂重が重いため「やや弱」となっている。
普及見込みはきらら397、「そらゆき」の全て8000ヘクタールに置き換える。道南農試によると、道南も適地だが、空知や上川管内での面積が多いという。23年度に試験栽培し、24年度に一般栽培が始まる見通し。
道南農試研究職員の丸田泰史さん(33)は「多収で農家の収益が上がる。実需も手頃な価格で大量にコメが手に入るのでうれしいと思う。減農薬栽培ができ、社会ニーズにも合致している」と強調する。(山崎大和)