函館本通小学校(鈴木敏文校長、児童322人)は3日、3、4年生109人を対象とした道徳の特別事業を同校で開いた。旭川市旭山動物園園長の板東元さんが、同園の動物たちの様子を交えながら「伝えるのは命・つなぐのは命」と題し講演した。
板東さんは、道教委の道徳教育の非常勤講師特別派遣事業で来校。獣医、飼育員としての仕事の原点について、年老いた雌のオオカミの治療を挙げた。吹き矢で眠らせ投薬を続けたが、最後は吹き矢を打たれたことが原因でショック死をしたという。
板東さんは「野生の生き物が意識を失うことは死ぬということ。僕の姿を見ると震え出すようになり、最後は恐怖で死んだ。治すことが良いことだと信じていたが、自分が正しいと思っていても相手はそうではないのかも知れない。命って何だと考えた一番の出来事だった」と述べた。
オランウータンの繁殖では、体格差がある雄が雌に危害を加える懸念があったが、本来の生息環境に似せた立体的な飼育舎が功を奏し、雄と雌が互いに距離を縮めていったことを紹介。「雄のジャックはどうしたら雌のリアンが自分を見てくれるのか、相手の気持ちを考えて優しくなったんだと思う」と述べた。
年老いて亡くなったホッキョクグマ、突然倒れて起き上がることができなくなったゾウ、事故で首が折れたキリンといった死の場面にも触れた。板東さんは「命はいつ終わりが来るのか分からない。生まれて、死ぬから命がある。みんなもどんな生き物を飼っても最後まで見届けてほしい」と話した。
冬の風物詩となったペンギンの散歩や、1月に生まれたばかりのカバの赤ちゃんの映像には笑い声が上がった。児童たちは動物の様子や飼育員の仕事に関する質問をしたほか、「命の大切さが分かりました」などと感想を寄せていた。(今井正一)