開港とともに異国との交流を深め、
函館の歴史にその名を刻む
「實行寺」は、1655年、法華遊行僧・清寛上人が箱館山の山麓に結んだ草庵に始まり、90年、松前町にある法華寺の末寺となり仏閣を建立。1709年から「實行院」を名乗ったと伝えられ、京都・本満寺より寺号免許を受けた14年に、現在の公称となった。
この寺を代々守る住職らが、仏教の本質である慈悲の心で人々を助けるため、寺の門戸を広く開いたことを背景に、幕末から明治にかけて、数々の歴史の舞台にもなった。1854年、アメリカのペリー艦隊が来港した際には、一行の写真班が寺を宿舎とし、現存する日本最古の銀板写真を撮影したとされる。また、55年にフランス軍艦が入港すると、疾病を患う多数の水兵を養生所として迎え入れ、58年には境内にロシア領事館も開設された。さらに、箱館戦争が終結した69年には、市街地に放置されていた榎本軍をはじめとする796人もの戦死者を、新政府軍の命に背いて密やかに収容、埋葬したことでも知られ、75年には谷地頭町に「碧血碑」を建立し、150年以上に渡り慰霊祭を執り行ってきた。現在も境内には日仏親善函館発祥記念碑が残され、外国人や旧幕府軍の子孫も参拝に訪れており、開港都市の足跡を知る上で欠かせない場所になっている。
(ハコラク 2022年 4月号掲載)
日蓮宗 一乗山 實行寺
函館市船見町18‐18
☎0138‐22‐0341
寺務所8:00~16:00
無休 P有り