〝檜山〟に息づく人々の暮らしと
幕末の動乱を伝える館城の物語
1986年にオープンした「厚沢部町郷土資料館」は、一歩中に入ると地域に自生する木々の標本が並び立ち、土地の8割が林野という町ならではの植生の豊かさを体感させる。近代、林業で栄えた町の山林では、川の周辺から多くの遺跡が発見され、2万年前にさかのぼる石器時代の遺物や海辺の人との交易を推察させる大型海獣の骨で作られた「銛先」、珍しい形状の縄文土器なども出土。この地に古くから息づく人々の暮らしから現代に続く産業や教育の歩みまで、さまざまな切り口で伝えている。
同館を語る上で欠かせないのが「館城と箱館戦争」の展示。幕末維新期、外国船が北海道に訪れるようになり、松前城が艦砲射撃の脅威にさらされると、松前藩は防衛力の強化と農業への事業転換を図るため、1868年に現在の厚沢部町城丘に和式城郭「館城」を築城。城は完成からわずか25日で旧幕府軍の攻撃で落城し、現在見られるのは跡地のみだが、館内では現地の出土品をはじめ、江差町で発見された城の見取図などを参考に作ったジオラマを展示。町内には松前藩がヒバ材を切り出したとされる山が土橋自然観察教育林(レクの森)として残されている。外部との連携も図りながら城跡の整備と史料保全に努めている。
(ハコラク 2021年7月号掲載)
厚沢部町郷土資料館
厚沢部町新町234‐1
☎0139‐64‐3436
9:00~17:00
(土・日曜は9:00~12:00、13:00~17:00)
休館日/月曜、祝日、年末年始
入館料/大人160円、 小・中・高校生100円
(厚沢部町民は無料)
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