長年の経験が見せる〝本物の味〟
基本に立ち戻った円熟の日本料理を
かつてこの場所で「新・和料理遊食 あき山」を10年間営み、今年9年ぶりに復活を果たした「本町大人の和料理 あき山」。料理長の秋山一巳さんがこの道を志したのは37年前。料理人として板前の世界の厳しさをよく知っていた父親の反対を押し切り、17歳の若さで東京の懐石料理店で修業を始めた。昔気質の親方の下、朝から晩まで洗い物や鍋磨きをする日々から包丁を持たせてもらうまでには2年近くもかかったという。多くの仲間が次々と辞めていったが、「料理人として父親よりも上手くなりたい」という一心で腕を磨き続け、故郷で自身の店を立ち上げるまでに至った。
「もう一度きちんとしたおいしいものを作りたい」。そんな思いから店を再開した秋山さん。かの芸術家・北大路魯山人が残した日本料理の基礎観念〝理を料る〟という言葉を胸に、奇をてらうことなく基本に立ち戻り、経験を重ねることで見えてきた〝本物の味〟を大切にする。卵が固まるギリギリの量までたっぷりとだしを含ませた「匠の葱入り出し巻き玉子」は、ふんわりとみずみずしく濃厚な旨みが口の中にあふれ出る。創業から愛され続ける「海老しんじょ」は、すり身にエビの切り身を加えることで食感を引き立て、じっくりと滋味を楽しめる究極の味わいへと進化させた。だしには薄削りのカツオと厳選した昆布、それぞれ香りと旨みだけを丁寧に抽出した2種類を用意し、豆腐・肉・魚・煮物用と専用に取り寄せた4種類の天然塩を料理ごとに使い分け。素材と向き合う料理人の研ぎ澄まされた空気がカウンター越しにも感じ取れ、「昔は真剣過ぎてお客さんに目の前には座れないと言われたこともあったな」と朗らかに話す秋山料理長。人生経験が詰まった料理の数々は、一度知れば忘れられない大人の味だ。
(ハコラク 2020年1月号掲載)
本町 大人の和料理 あき山
函館市本町21‐1
☎0138‐76‐3693
17:30~24:00(23:30L.O)
日曜定休
喫煙可
クレジットカード利用可