広島県に住んでいた頃、北海道から野菜が届くたびにお友だちやご近所の方に差し上げていた。ところがある日、広島産のジャガイモをいただいた。それがおいしい。カボチャもアスパラも北海道産に劣っているとは思えなかった。野菜はそれぞれの土地でおいしく栽培されていることがよく分かった。
しかし、8年近く広島で暮らした後、北海道に戻って前言撤回。ジャガイモ、トウモロコシ、カボチャ、アスパラは北海道産が比類なくおいしい。北の大地の作物がこんなにおいしくなるまでには、どれほどの試行錯誤と苦労があっただろうか。荒野を切り開き、寒冷地でも立派に育つ品種を探して継続的に栽培できるようにした先人の努力は計り知れない。
今はアスパラガスがおいしい。ホワイトアスパラを茹(ゆ)でる時は、塩、砂糖、バター、レモンなど、人それぞれのやり方がある。ソースを工夫すればいかようにも楽しめる。マヨネーズに刻んだピクルスや粒マスタードを入れただけのソースも簡単でおいしい。ホワイトアスパラは盛り土をして育てるので手間がかかる。だが最近は遮光フィルムなどを使う方法もあるという。生産者たちの絶え間ない挑戦と研究のおかげで食生活は豊かに守られているということだ。
ウイルスの脅威が世界共通の悩みになった今、もし流通がストップすれば食の安定的な供給は危うくなる。今こそ地元の食材を大切にしたい。なにより季節の野菜はこんなにおいしいのだから。(生活デザイナー)