今年は早めに北海道に上陸した桜前線、各地で大勢の桜ファンを魅了し続けている。だが春の花の代表として、私はチューリップをあげたい。
「さいたさいた チューリップのはなが…」というあの童謡は、誰にとっても懐かしく、そして子供たちが描く花の代表はチューリップではないだろうか。切り花にするとすぐに満開になって散ると言う人もいるが、それは管理が悪いからだ。
チューリップは強い。満開になっても、気温が下がり夕方になると固く閉じる。そしてまた開く。閉じたり開いたり、温度と光に合わせた見事な「舞」を見せてくれる。次世代のための準備が完全に調ったあと、その衣装である花びらを脱ぎ捨てる。実に優雅でドラマチックな花なのだ。
チューリップの歴史は興味深い。オスマン帝国が華やかなころ、モスクや衣装、絵画などに頻繁に様々な花びらのチューリップが登場する。16世紀前半、その人気はピークに達し、愛好家だけでなく、ついに投資の対象になった。そして定石通りバブルは崩壊。ヨーロッパ三大バブルの一つがオランダのチューリップだと聞けば、その人気の高さが伺える。
斑入りや尖った花びら、華やかなフリル付き、八重など品種は多いが「赤、白、黄色」が私は好きだ。桜を眺めた帰り道、ある公営住宅の裏庭に写真のチューリップ畑を見つけた。あの童謡の2番は「ゆれるゆれるチューリップのはなが…」である。揺れても簡単には散らないチューリップこそ、春の花の代表だと私は思う。(生活デザイナー)