入学式を終えて新生活をスタートさせた学生たちは学校生活に慣れてきたころだろうか。新社会人はどうだろう。学生時代のようにさぼることも遅刻も許されない。これからは周囲の人たちから積極的に学び、自分自身を育てていってほしい。
だが最近驚くような話をいくつか耳にした。夢だった仕事に就いて2日目に、自分には向かないから退職したいと申し出た教師がいるという。入社早々買い物に出掛けたままもどらない新入社員の話も聞いた。初営業に出向いた先から辞めたいとメールが来たとか、一週間で親から辞めさせてほしいと電話があったなど、にわかには信じがたいが、それが現実だという。
頑張りすぎたり、悪質なハラスメントに耐えて心身を壊してはならないが、あまりに早い退職はいかがなものか。社会を甘く見すぎてはいないか。家庭も学校も、我慢の仕方や程度、努力の方法や結果の受け止め方など、もっとしっかり教えておくべきだったのかもしれない。しかし、それが何より難しい。教科の内容を教えるより、はるかに難題なのだ。
昨年、中国で孔子の故郷を訪ねた。孔子が初めて子供たちを集めて教えたという杏の木の下に立った時は熱くこみ上げるものがあった。「友あり遠方より来たる」の続きは、人に認められなくても恨まず気にせずということですよと、中国人の友人が説明してくれた。教える側も学ぶ側も謙虚で純粋だった時代に何か指針が見つかりそうな気がする。大人の責任は大きい。(生活デザイナー)