記録的な不漁が続いている函館市のスルメイカ漁が、21日からわずかに回復をみせている。函館市農林水産部によると、市水産物地方卸売市場の21~24日の生鮮スルメイカ取扱量は、いずれも20トン(速報値)を超え、浜値も低下傾向。鮮魚販売店などでは値下げの動きもみられはじめた。ただ、好調が継続するかどうかは不透明で、市場関係者の間には今後の漁模様への期待と不安が交錯している。
市農水部によると、同市場の21日の取扱量は26トン、22日が27トン、24日が50トン(いずれも速報値)で、キロ単価は600円台前半で推移。昨年の同時期をみると、20日が6トン(キロ単価=1216円)、22日が2トン(同2220円)、23日が0・3トン(同1061円)だったことから、数量・価格とも昨年を大きく上回った。
函館市中島町の中島廉売にある鮮魚店「紺地鮮魚」(紺地慶一代表)では25日、いけすイカ1杯250~300円で販売。紺地代表(55)は「昨年のこの時期は、1杯400~500円だったので半値近い」という。同市場でスルメイカを購入した市内若松町の主婦(73)は「今年初めてイカを買った。まだ高いなという印象。1日も早くイカがたくさん獲れることを期待している」と話す。
函館朝市で海産物を扱う「高田屋村本商店」は同日、いけすイカ4杯を1500円で販売。高橋正昌店長(56)は「今週に入り獲れはじめたといっても、例年だとこの時期は1000円。高値が続いていることには変わりない」という。ただ、「この調子で獲れ続けてくれれば、来週には販売価格にもっと反映できそう」と期待を寄せている。
一方、ある市場関係者は「今回の好調が続いてほしいと願ってはいるが、事前の漁況予測からみても突然漁獲量が増えるとも思えず、不安はぬぐえない」と口にする。道総研函館水試が発表した日本海スルメイカの長期漁況予測によると、道南や津軽を含む北海道の日本海側や本州北部などの海域の今期の来遊量は、全体的にみて不漁だった前年並みで、過去5年平均を下回るとみられ、道南や津軽だけでみても、前年並みで過去5年平均を下回るとみている。(野口賢清)