6月1日に解禁した道南スルメイカ(マイカ)漁が、今年も不漁に苦しんでいる。函館市水産物地方卸売市場での6月の生鮮スルメイカ取扱量は、前年同月比46・4%減の96トンで、記録的な不漁だった昨年の同月の179トンを大きく下回って推移している。
市農林水産部によると、6月の平均単価は前年より243円高い1キロ当たり750円で、2005年以降で6月の最高値をつけた。取扱金額は20・7%減の7202万円だった。
漁解禁前の漁況予測では、豊漁とはいかないが昨年よりは期待できるとの見方から、漁獲増への期待が集まっていた。ところが、昨年を大きく下回った今回の結果に出鼻をくじかれた形となり、関係者の間には先行きの不安が広がっている。函館魚市場営業一部の平松伸孝次長は「序盤から最悪の形で始まってしまった。これから急に漁獲量が増えるとは考えにくいが、それでも期待するしかない」と苦しさをにじませる。
同日発表された道総研函館水試の「道浮魚ニュース」によると、道南周辺の日本海・太平洋スルメイカ漁場を同場の調査船・金星丸で調査した結果、日本海のスルメイカ分布密度は昨年や過去5年の平均を下回った。また、日本海の魚体サイズも同じく昨年や過去5年平均より小さかった。
スルメイカの分布の目安となる水深50メートル層の水温は、10度を超える比較的高い水温の海域が昨年と比べ沖合まで広くみられ、恵山沖ではスルメイカの来遊が確認できた。同水試の澤村正幸研究主査は「日本海側の資源量そのものが多くなく、群れの回遊が沖を通っていることに加え、津軽海峡に入ってきていないことが影響している」と指摘。ただ恵山沖では来遊がみられたことから「道南太平洋に来遊するスルメイカが、これからの漁の中心になる可能性がある」としている。(野口賢清)