函館市農林水産部がまとめた市水産物地方卸売市場での10月の生鮮スルメイカ取扱量は、前年比15トン減の77トンとなった。統計の残る2005年以降で最低だった22年(92トン)を下回り、過去最低を更新。一方、薄漁に加え、函館の観光需要が復活したことから、1キロあたりの平均単価は同165円高い1250円で、2年連続1000円を超え過去最高を記録。歴史的な不漁が続いており、今季も予断を許さない状況だ。
同部によると、10月の取扱量は18年以降、3年連続で過去最低を更新していたが、21年に前年を上回る136トンとなった。しかし、22年は92トンと再び落ち込み、初めて10月として100トンを下回った。23年はさらに下回る77トン(上旬5トン、中旬20トン、下旬52トン)で、取扱金額は同297万円減の9634万円。出漁日数は昨年と同じ23日だった。
漁期が始まった6月から10月までの累計は、取扱量230トンで過去最低となり、単価は初めて1000円を上回る1369円。
同部は「10月は今季月別で最も漁獲が多かったが、低水準の範囲内。単価は新型コロナウイルス禍からの経済の回復で飲食店や小売店での需要が高まった」とする。
函館市中島廉売内の紺地鮮魚の紺地慶一社長(61)は「10月は、日によって捕れたり捕れなかったりして変動が激しかった。現在は店頭でいけすイカ1匹600円で、高値安定。例年だと、この時期は身が厚くて大きい秋イカ(戻りイカ)が南下してくるが、今年は魚体が小さい。海水温など海に異変が起きている可能性がある」と話す。
道総研函館水試の三原栄次主任主査は「10月は太平洋から来遊する冬生まれ群が主体となるが、冬生まれ群の資源量は低迷が続いていることが、水揚げが少なかった原因と考えられる」と指摘。水温に関し「10月は水温も徐々に低下し、表層付近もスルメイカの適水温範囲になってきたので、来遊には問題なかった」という。漁獲の見通しについて「近年は10月下旬~11月上旬に一時的に漁獲量が増加する傾向にあり、今年も同様の状況にあるが、今後は産卵のため日本海を南下するため、函館近海への来遊は減っていくだろう」としている。(山崎大和)