函館市都市景観審議会(岩田州夫会長)は、1921(大正10)年建築の旧仁壽(じんじゅ)生命函館支店(末広町18)を伝統的建造物(伝建)に加えることを確認した。対象は木造2階建ての主屋と併設する土蔵の2件。市教育委員会に答申し、今月中旬の議決を経て正式決定する。
市は88年に文化財保護法に基づく伝統的建造物群保存地区(14・5ヘクタール)を定め、旧仁壽生命も伝統的建造物の一つに指定された。その後の税制改正などで伝建指定に所有者の同意が必要となったが、旧仁壽生命など一部物件所有者から同意が得られなかったため、90年3月に指定から除外した。現在の建物所有者が今年6月、指定に同意したことから、市教委が同審議会に伝建保存計画の変更を諮問した。
旧仁壽生命は大三坂に面し、白色の主屋は縦長窓や上部のテラコッタ装飾などモダンな洋風建築物で、玄関部分を挟んで坂の上部には土蔵造の蔵がある。旧仁壽生命が退去した後は海運会社の社屋としても使われた。
1日に開かれた審議会では、委員から「近現代様式と和の蔵が近接し、歴史の生き証人のような建物」などの意見があり、伝建指定に対する異論はなかった。主屋と蔵の2件が加わることで伝統的建造物の指定物件は計77件となり、2009年に旧相馬邸関連の4件を追加して以来の増加となる。
現在は居住者の倉庫として使われているが、建物自体の老朽化が進んでいるため、市都市建設部まちづくり景観課は伝建指定後に修繕に向けた支援方法を検討する。
また、同日の審議会では屋外広告物条例の施行規則などの改正案を示したほか、二十間坂の「自由の女神像」が6月20日に撤去されたと報告があった。(今井正一)