江戸時代から明治時代にかけ、北前船の寄港地として栄えた函館市を含む全国7道県の11市町がこのほど、文化庁に北前船文化の日本遺産認定を申請した。寄港地が連携して北前船の歴史的な魅力を国内外にPRし、観光誘客や地域振興につなげる狙いだ。結果は4月下旬に公表される見通し。
日本遺産は、地域の歴史や文化を発信し、活性化に結び付けようと文化庁が2015年に創設。歴史的魅力があるストーリーを重要視しており、これまで37件が認定されている。
北前船は、北海道、東北、北陸、関西の港を結んだ廻船で、日本海側の各都市に大きな繁栄をもたらした。函館では淡路島出身の廻船業者・高田屋嘉兵衛が拠点を設けたことで、港を中心とした都市発展の基礎が築かれた。
函館市とともに申請したのは、松前町、青森県の鰺ケ沢町・深浦町、秋田市、新潟県の新潟市・長岡市、山形県酒田市、石川県加賀市、福井県の南越前町・敦賀市。市によると、7道県の広域にわたる日本遺産の認定はこれまでにないという。
申請に際し、ストーリーを「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落」と題し、日本海の怒濤(どとう)を乗り越え、各地に物資や文化を運んだ北前船の功績を紹介している。
寄港地間の連携は07年に酒田市で開いた「北前船寄港地フォーラム」を契機に始まり、昨年6月には北前船文化の日本遺産登録を目指そうと26自治体でつくる「北前船寄港地日本遺産登録推進協議会」が発足した。本年度に11自治体が認定申請し、その後に15自治体の追加登録を目指す考えだ。
市コンベンション推進課の外山覚課長は「新たな観光資源の創出とともに、函館の魅力向上、市民の郷土文化の再認識にもつながる」と期待している。(金子真人)