函館市は、市内への設置を検討している看護系大学(学部)など医療従事者養成機関に関する調査の結果をまとめた。高校生と保護者からは、市内に進学先があれば進路として検討したいという声が強かった一方、医療機関などを対象とした調査では、病床数20床以上の病院で看護大卒者の採用に前向きなのに対し、診療所や介護老人保健施設では半数が「採用を考えない」とした。
進学需要に関する調査は市内と渡島、桧山、青森県の高校2年生4839人、市内の保護者1191人が回答。進学希望分野で市内高校生の約17%が看護学、約10%がリハビリテーション学を希望した。このうち、看護学選択者の希望進学先は国公立大学が約40%、看護専門学校が約27%だったが、市内高校生に限れば、専門学校希望者が国公立大を上回る結果となった。
また、市内高校生の進学希望地(複数回答)は函館約39%、首都圏約27%で、保護者は函館が約60%、首都圏が約13%と意識差があった。就職希望地でも保護者の地元志向が強く反映された。看護学希望者の市内高校生の約80%、保護者の約89%が市内に看護系大学があれば「ぜひ進学したい」「進学を検討したい」と答えた。
看護人材の需要に関する調査には、病院(病床数20床以上)27施設、診療所(19床以下)69施設、訪問看護ステーション10施設、介護老人保健施設8施設など計268施設が回答。現状で看護師・准看護師として働く4989人中、大卒者は118人にとどまることが分かった。
新卒看護職員の採用意向としては「学校種別にこだわらない」とする回答が多く、看護系大学の必要性については「必要である」が約45%、「どちらとも言えない・わからない」が約50%ときっ抗。市内に設置された場合、病院は卒業生の採用を9割以上が希望(検討を含む)したが、診療所や介護老人保健施設の5割超が「考えない」とし、施設の種別や規模によってニーズが異なった。
市内の既存看護専門学校へのヒアリングでは、研究機関としての役割が地域全体の底上げにつながると期待する一方で、市内での就職、定着には疑問の声もあった。
市企画部計画推進室新規政策担当は「開設するかしないかを含めて、検討すべき課題は多い。調査の結果を今後の判断材料の一つとする」としている。(今井正一)