北海道新幹線新函館北斗―札幌間(約212キロ)について、国土交通省の有識者会議が2030年度末の開業が早くても2038年度末まで先送りになる報告書を公表したことを受け、道南の沿線自治体ではまちづくり計画の見直しが求められ、落胆の声が上がっている。開業が大幅に遅れることで、地元の負担増も懸念している。
鈴木直道知事は「30年度末の札幌開業は道民の悲願であり、長年にわたり地元自治体や関係者が一丸となって取り組んできただけに、開業が大幅に遅れることは、にわかに受け入れられるものではない」と強調。開業時期の早期明示を求めてきたにもかかわらず、示されなかったとして遺憾の意を示した。
函館市の大泉潤市長は「北海道経済やまちづくりに大きな影響を及ぼすものとして、大変重い内容と受け止めている」とコメント。「市が検討している新幹線の函館駅乗り入れは、札幌開業と同時でなければできないことから、工期短縮を期待するとともに、一日も早い札幌開業の実現に向け、関係自治体や団体とともに取り組みを行う」と力を込めた。
北斗市の池田達雄市長は市のまちづくり計画への影響に言及。「新函館北斗駅前には、新たにホテル1棟と飲食を含めた複合ビル1棟の建設が予定されていたが、開業年次が分からないので、着工が止まってしまった」と危惧。市長は、北海道新幹線建設促進道南地方期成会の会長も務め「八雲町、長万部町、後志管内倶知安町にしても本来であれば、駅前の再開発や道路づくりなどを今年度あたりから始めなくてはならなかった。延伸時期が延びてしまうと、計画自体を作り直さなければならない」と影響の大きさを指摘する。
八雲町の岩村克詔町長は「札幌開業が遅れるとの前提で、新幹線延伸に向けたインフラ整備をしばらくストップしているが、どうしてこれほど遅くなるのか」とした上で「沿線自治体は(道新幹線期成会、道新幹線建設促進道南地方期成会などで)国交省に対し繰り返し説明を求めてきたが『当初予定での開業は困難』との報道が出てから今まで、国側から沿線自治体に要望を聞き取りに来ることはなかった。時間の猶予ができたことから、新八雲駅(仮称)の整備基本計画は大幅に見直す可能性がある」と話す。
函館商工会議所の谷口諭専務理事は「トンネル掘削でのさまざまなトラブルや、2024年問題による人手不足など厳しい環境が続いていることは承知しているが、道南のみならず北海道全体で札幌までの早期開業を要望するとともに開業効果拡大への取り組みを進めてきている中にあって、非常に残念」としながら「事業費の増加、沿線自治体のまちづくりや経済効果への影響など、多くの懸念が考えられることから、少しでも開業時期が早まるよう関係者には不断の努力を続けてほしい」としている。(山崎大和、加納洋人、神部 造)