函館市が公募していたJR函館駅前の市有地を活用した整備事業プロポーザルで、市は2日、最優秀提案者に大和ハウス工業東京本店を選定したと発表した。地上13階建て、300室程度のホテル棟と店舗棟からなる複合開発計画で2019年5月の開業を計画。ただ、函館の歴史感にそぐわないデザインが含まれたため、推薦には至らず、9月末までに修正を求めた。
市企画部によると、1日に審査委員会(委員長・瀬戸口剛北大大学院工学研究院教授、委員7人)を開き、3者がプレゼンテーション審査に臨んだ。大和ハウス工業の提案は雇用創出や周辺への経済効果、適切な資金調達計画、投資計画の立案などが評価された。
事業用地は、市と市土地開発公社、JR北海道が所有する計9887平方メートル。ホテルと長期滞在型のサービスアパートメント1棟(地上13階、延べ1万2234平方メートル)と、店舗棟(平屋建て1221平方メートル)で構成し、施設全体の建築面積は2933平方メートルとした。
駅舎と並ぶように配置するホテル棟と車道に面した店舗棟の間にはイベント実施が可能な交流広場を設ける。用地北側には一般車両142台と大型バス用の駐車場を整備。店舗棟には地元企業を積極的にテナントとして誘致するほか、地場の食材を使ったレストランが入る。
ただ、外国人観光客を意識し、全体のキーワードを「和のおもてなし」に設定し、「宿場町」をイメージした外観に対し、審査委は「函館の歴史・文化を再検証し、和風のデザインを見直し、市民が共感できるデザインにすること」「市民も利用しやすい施設とし、それに沿った運営のあり方の提案をすること」などを推薦条件とした。
9月末までに修正案を求め、10月に再度、審査委で推薦の可否を決定。年内にも市とJRとの3者間で事業協定締結後、正式契約に向けた調整を図る。
駅前市有地をめぐっては当初、12年に実施したプロポーザルで洋菓子工場を軸とした商業施設計画を選定したが、収支計画の見通しの悪化によって13年5月に計画自体を白紙に戻した。市は今年5月に条件を見直して新たなプロポーザル実施要綱を公表していた。
市企画部の田畑聡文計画推進室長は「今回審査した3者以外からも関心が寄せられ、函館に積極的に目が向けられていると感じていた。計画が実現し、函館の活性化につなげてほしい」と話していた。(今井正一)