印刷大手の凸版印刷(本社=東京)は8日、デジタル技術を活用し新規ビジネスを展開する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」システムの開発拠点となるサテライトオフィスを函館市内に開設したことを明らかにした。歴史的な建築物を活用した企業進出。同社と函館市は連携協定を同日締結し、新規事業創出や、地元高等教育機関の人材採用を想定した雇用拡大などを通じて地域活性化に取り組む方針だ。
地域環境を活用したデジタル開発の拠点「ICT KOVO」。2020年4月の長野県飯網町を皮切りに沖縄県うるま市、広島県廿日市市、福岡県大牟田市に開設し、函館市は全国5カ所目となった。各拠点では既に地域と連携した新システムやアプリケーションが開発されているほか、プログラミング教室を開催するなど教育支援も行っている。
函館の開発拠点は、1913年に建てられた函館市景観登録建築物である「旧大洋漁業函館営業所」(大町8)をリノベーション。床面積177・95平方メートルに最新のデジタル機器を整備し、本社とのリモートワークやテレワークに対応する。地元企業や人々との交流を通じて新事業のアイデアも広げていくとする。
従業員は現在本社からの2人が勤務するが、将来的には地元採用も含めて30人規模の体制を目指す。
大泉潤函館市長、凸版東日本事業本部北海道事業部長の我妻康氏が包括連携協定を締結後、開発拠点の開所式が行われた。
我妻康氏は「あえて大都市ではなく、観光都市としてのブランド力がある函館を開発拠点に選んだ。地域の特性を生かした独自の成果を期待したい」と開設理由を説明。「はこだて未来大や函館高専のような優秀な教育機関も多くあり、地元人材の活用も積極的に進めていきたい」と話した。
大泉市長は「最先端の研究拠点が函館に誕生したことは大変ありがたい。地域社会の活性化に向けて、さまざまな形で連携していきたい」と述べた。
実弟であるタレントの大泉洋さんが同社のCMキャラクターを務めており、大泉市長は「私が選挙で市長に当選したタイミングで(弟と関係する会社の)開所に立ち会えたことは、不思議な縁を感じる」と話していた。(小川俊之)