函館八幡宮(川見順春宮司)は17日、一年の五穀豊穣や平穏を祈る「祈年祭」を開いた。今年は新型コロナウイルス流行の早期収束を願う「悪疫退散祈願祭」を合わせて行い、故事に倣って「烏扇(からすおうぎ)」を用いて悪疫を追い払った。
同神社奉賛会の藤井方雄会長ら約40人が参列。祈年祭は全国的には2月に行われるが多いが、同八幡宮では春が訪れる3月に開いている。川見宮司は祝詞の中で「疫(えやみ)」を払うことなどを祈願。参列者は幣帛や玉ぐしをささげ、豊栄の舞が奉じられた。
神事の後、川見宮司はカラスの絵が描かれた扇を見せながら、「約1200年ほど前に書かれた『古語拾遺(こごしゅうい)』という書物に悪疫を払う方法として『烏扇をもって扇(あお)げ』とある」などと故事を紹介。黒い実を持ち、葉が扇状に広がる植物「ヒオウギ」には「カラスオウギ」の古名があるといい、後の時代に鳥のカラスを描いた扇を用いるようになったと見られる。
同八幡宮ではカラスの絵とヒオウギの写真が入ったうちわをつくり、参列者に配布。本殿前に一列に並んだ後、「広幡の八幡の神が悪疫をば罰め払うぞ散り散りに去れ」など悪疫を追い払う3首を詠みながらうちわであおぎ、「悪疫退散」と唱えながら塩をまいた。(今井正一)