耐震改修工事のため長期休館中の函館市民会館大ホールで28日、緞帳の洗浄作業が行われた。1970年の開館当初から使用しているため、50年が目安とされる耐用年数とほぼ同程度の歳月が経過し、劣化も目立つ状態。作業員が洗浄用の機械を用いて丁寧に表面の汚れを落とした。
同館は2017年11月から工事のため休館中。建物本体の工事はほぼ終わり、他の備品とともに市内で保管していた緞帳を今月22日にホールに戻し、裏地の交換、ほつれの補修などを進めてきた。
最終盤の工程となるクリーニング作業は、緞帳を製作した京都の老舗織物メーカー、川島織物セルコンが実施。作業員は、泡の出る手のひら大の円形のブラシを使って汚れを浮き立たせ、バキュームでの吸い取りなどを実施。終了後は防炎加工も施した。
大ホールの緞帳は、同社の製品でも現役最古級の1点だという。原画は、函館の画家、橋本三郎氏(1913~89年)が北洋漁業の出港風景を描いた「暁照残月」。経年による色あせはあるが、作業によってカモメの翼は白く、山肌は青々となり、特殊な素材が使われた太陽や月は輝きを取り戻した。
同社美術工芸営業部主幹の滝上和則さん(50)は「十二分に汚れている状態だったが、クリーニングによって繊維の劣化を抑えることができる」と話していた。(今井正一)