旧函館東高校で美術教諭を務め、創作凧師(たこし)として知られた梅谷利治さんが8月27日、肺炎のため、88歳で死去した。教員時代から独創的なたこづくりに情熱を注ぎ、2013年1月まで毎年、新作の干支(えと)のたこづくりを続けるなど、愛や平和への思いを込めた作品を大空に届けてきた。急逝を受け、巨大な龍(りゅう)の連だこをはじめとする作品展が市地域交流まちづくりセンターで開かれている。15日まで。
梅谷さんは1929年、函館生まれ。旧制市立中学校出身。旧陸軍特別幹部候補生として、八戸で航空機の操縦訓練を受けいている時に終戦を迎えた。60年から母校でもある旧東高に勤務し、授業にたこづくりを取り入れ、退職後は創作凧(だこ)研究所「創作凧治工房」を主宰。半世紀近くの創作活動で、干支だこだけでも3順するなど、数多くの作品を残した。
作品展は、教え子でたこ揚げを一緒に続けてきたNPO法人体験塾SUMOCCA代表の中田嘉明さん(59)が同センターの協力を得て、急きょ企画。シルクスクリーン用の道具や絵筆、これまでの作品の記録集、緑の島や豪華客船「飛鳥」(初代)の上空での連だこ揚げなどの写真も並べた。
梅谷さんは生前「世界中どこにもない凧を作りたい」と、同じ図柄のたこを並べてつなげ、全長が30メートルを超えるような巨大作品も生み出した。図柄には「愛」や「夢」といった字が書かれたものが多い。中田さんは「梅谷先生は『空に願いを』をポリシーにして、情熱の塊でオーラのある人だった。多くの皆さんに作品を見てもらえたらうれしい」と話している。(今井正一)