低気圧から伸びた前線が通過したことに伴い、道南地方は22日未明から明け方にかけて、各地で雷を伴う激しい雨となった。森町や今金町では1時間降水量の観測史上最大値を更新。八雲町旭丘では、JR函館線の線路上に大量の土砂が流入し、函館と札幌を結ぶ特急が終日運休した。23日は始発から通常運行となる。函館を中心に住宅の停電や浸水被害も相次いだが、この雨に伴うけが人はなかった。
函館地方気象台によると、前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んだことが大雨を招いた。雨のピークは、せたな町で午前0時台、函館は同4時台と前線が南下し、局地的に2~3時間にわたって激しい雨が続いた。森町では午前2時40分までの1時間に観測史上最大の63ミリの雨となったほか、八雲、知内などでも7月の観測記録を更新した。函館では同3時半ごろから同4時20分ごろまで雷も鳴り響いた。
八雲 線路に土砂流入
この雨で、各地でのり面が崩れるなどの被害があった。JR北海道によると、八雲町の函館線野田生―落部間の線路上に土砂が流入し、復旧作業に追われた。函館―札幌間の特急は始発から運休となったが、午後には札幌―八雲間、函館―森間に臨時特急、八雲―森間は代行バスを走らせた。北海道新幹線も青森県側の雨の影響で、早朝の新函館北斗発のはやぶさ10号が新青森までの区間で運休、新青森発新函館北斗行きのはやて91号が運休した。
はこだてライナーも一時、運転を見合わせたため、JR函館駅では札幌方面に向かう列車や新幹線に乗車予定だった観光客らで午前中を中心に混雑。バスやレンタカーに切り替えて目的地に向かう姿も見られた。
森 110世帯に避難勧告
森町では、午前4時25分に蛯谷、本茅部、石倉各町の110世帯に避難勧告を出し、開設した避難所の石谷小には3人が避難。町消防本部によると、床下浸水を砂原地区で2棟確認した。町内各所で住民らによって道路わきに流れ出てたまった土砂の撤去作業が行われた。また、上台町の国道5号では、道の駅向かいの森中学校側ののり面が幅、高さ各8メートルに渡って崩れ、土砂が車道に流れ込んだため、同日正午に応急措置が終わるまで通行止めとなった。
道路冠水、家屋被害
函館市総務部によると、市内では午前5時前後を中心に52件の消防通報が寄せられた。午後1時現在のまとめで、住宅の床上浸水9軒、床下浸水8軒、道路の冠水6カ所など。市は被害状況を確認し、道路の清掃や消毒を進めた。
家屋の浸水被害が集中した昭和町4の住宅地の一角では一部の道路が河川のようになり、ピーク時には大人の股下くらいまで水につかった状態になった。明け方からポンプで水をくみ出したり、庭先や室内の清掃に追われた。
近くの男性会社員(53)は「午前4時過ぎに道路にポリタンクが浮いているのを見て、外に出ると車のタイヤが半分ぐらい水没していた。自宅は床下浸水で済んだが、道路の排水対策を講じてほしい」と話した。別の60代女性は「雨と雷で外に出ることもできなかった。何年かごとに水につかることはあったが、未明にマンホールのふたが浮くような降り方は初めて」と驚いていた。
函館建設管理部によると市内を流れる鮫川、常盤川など3河川で午前3~4時台にはん濫危険水位を超えた。このうち、昭和4丁目に観測地点がある石川は午前3時50分にはん濫危険水位の12・82メートルを超えたが、河川から水があふれるような事態にはならなかった。南渡島消防本部によると、北斗市内の常盤川河口に係留していた小型船舶が水につかり、エンジンオイルなどが流出した。
落雷 広範囲で停電
北海道電力によると、落雷により送電線の断線や配電機器の故障が広範囲で相次ぎ、函館市桔梗町や東山町などでは午前3時過ぎから約3970戸が停電し、最長で6時間40分続いた。北斗市でも久根別や七重浜の一部約730戸が停電。いずれも午前10時ごろまでに復旧した。(今井正一、蝦名達也、田中陽介)